心にぐっとくる漫画

アイネクライネナハトムジーク(漫画)のあらすじと感想と名言

心にぐっとくる漫画1

久しぶりに本屋へ行ったら「お求めの本は増税前に」という文字があり、「買おうかなぁ」と迷っていたいくえみ綾作品を思わず買ってしまいました。

【アイネクライネナハトムジーク】上下巻。

原作は伊坂幸太郎さん。伊坂幸太郎さんが斉藤和義さんから作詞を頼まれ、「作詞は出来ないが小説なら」と生まれた作品です。

そして、コミカライズをするにあたり伊坂幸太郎さんがいくえみ綾さんに依頼して出来上がったのが、漫画「アイネクライネナハトムジーク」というわけです。

三浦春馬さんで映画化もされてますね。

小説の方は読んでいませんが、漫画を読んで、「原作を知らなかったらこれはいくえみ綾だなぁ。」と思いました。

下巻の最後に伊坂幸太郎さんの文章で「これは、純正いくえみ綾さんの作品です。」と書かれていて、なんだか、それもすごく良いです。

※若干のネタバレあります。

漫画・アイネクライネナハトムジーク

「アイネクライネナハトムジーク」は6つの作品からなる短編作品ですが、それぞれの作品に出てくる人たちがどこかで繋がっているという作品同士。

テーマは『出会い』とか『繋がり』とかなのかな?

この辺もいくえみ綾っぽいよなぁ。と思ったり。

【上巻】

  1. アイネクライネ
  2. ライトヘビー
  3. ドクメンタ

【下巻】

  1. ルックスライク
  2. メイクアップ
  3. ナハトムジーク

『アイネクライネナハトムジーク』はモーツアルトのセレナードの一つですが、ドイツ語で【一つの小さな夜の曲】とか【その小さな夜の曲】とか【小さな夜の曲】とか、という意味なんだそうです。

一つ一つの作品に絶対的なパンチ力があるわけではないのですが、まさに【小さな夜の曲】という印象。(実際に「アイネクライネナハトムジーク」を聞くとそんな印象ではないんですがね・・・。)

か~ら~の~

最後は時系列でたたみかけてくる感じはたまりません。

漫画の場合、上巻が伏線で下巻の最後で回収って感じですかね。



1、【アイネクライネ】のざっとしたあらすじ

ある会社で働く佐藤ですが、先輩の藤間がデータを消失してしまい、なくなったデータのために街頭アンケートを行います。なかなかアンケートに答えてくれない街の人たちですが、ある一人の女性がやっとアンケートに答えてくれました。

一方、野外モニターで流れているのはボクシングの試合。アンケート調査が進みボクシングの試合が気になりモニターを見に行く佐藤ですが、最初にアンケートに答えてくれた女性も試合を見ていて、一人で応援してガッツポーズをしているのを見かけ、ほほ笑むのです。

この時点で最初の10ページ。

最初の10ページだけで、なんだか心が温かくなってしまいました。

「なんか分かるなぁ(。-∀-)」と・・・。一人で楽しんでる人を見ると「フフ」ってほほ笑んじゃうよ。

後で読み返して気づいたんですが、このボクシングの試合も少し伏線的な。

【アイネクライネ】の登場人物

佐藤アイネクライネの主人公。会社員
藤間佐藤の先輩で妻子が出て行き傷心中
織田佐藤の大学時代の友人
織田由美織田の妻。織田とは大学時代に結婚
アンケートを書いてくれた女性出会い(?)後の彼女?
3話の『ドクメンタ』で主人公になるのは、佐藤の先輩の藤間です。

佐藤も織田夫妻も、この後もちょこちょこ出てきます。

【アイネクライネ】の名言

佐藤が織田夫妻の家に行った時にする「出会い」の話の中でのセリフです。織田のセリフがすごく良い。

劇的な出会いとか、すれ違いにハンカチ落としてそれを拾って、みたいな会話。からの織田。

出会いなんてどーでも
『あの時あそこにいたのが彼女で本当に良かった』
って幸運に感謝できることこそが
一番幸せなんだ

大事なのはハンカチが落ちることじゃなくて
『あの時あれがあの子で俺は本当に助かった』
『俺 ナイス判断』
って思えるようなのが最高の出会いだ

「なるほど」と、納得してしまったよね。

恋人とか友達とか、人との出会いではないんですが、洋服屋さんで言われたことを思い出してしまいました。

「お財布事情で悩んでますか?試着して良くて悩んでるなら、買っても損はないと思いますよ。こういうのは出会いなんで。」と。

あの店員さんは上手かったな(。-∀-)

洋服の場合は、買わなかったことに対して「あぁ、やっぱ買っとけばよかったかな。あれは出会いだったな」って後悔の方で思い出しちゃいますが、そうか、「このワンピースと出会えた私、ナイス判断!」って思うようにしよう。って思ったり。

大学時代に、由美さんがハプニングで妊娠して結婚した織田夫妻ですが(漫画では回想シーン)、その時の織田のセリフもぐっときてしまいました。

だけど すげえよな俺
すげえ助かった
これで俺と彼女の繋がりは
ベリーベリーストロングになったわけだからよ

織田。かっこいいのである。

『ベリーベリーストロング』は伊坂さんとのコラボ曲で、映画の中でも使われている曲です。

この他にも、妻子が出て行き傷心中で3話の主人公になる、藤間の奥さんとの出会いも良かったりします。

2、【ライトヘビー】のざっとしたあらすじ

27歳の彼氏無し美容師の美奈子は、ある時お客さんの香澄から「弟はどう?」と香澄の弟を紹介されます。一度は断る美奈子ですが、香澄の変な行為で香澄の弟の学と電話で話すようになる美奈子。

電話だけで繋がる二人ですが、美奈子は学の姿はどんなだろうと想像をします。そんな学の正体は・・・。

・・・はい。いやらしい書き方をしましたがちょっとネタバレ。

香澄の弟の学は、ヘビー級ーのプロボクサーです。

ライトヘビーの中では美奈子の話を聞き役の日高と寛子が出てきますが、3人が行く場所は、今の自分の状況を話すと、1回100円で歌を返してくれる路上パフォーマー(?)の斎藤さんのところ。

美奈子は事あるごとに斎藤さんのところへ行き、自分の状況を話し曲をもらうんです。

この斎藤さんは、斉藤和義さんなのかな?

漫画の中で書いてある詩は、斉藤和義さんの「FIRE DOG」「引っ越し」「決断の日」「空に星が綺麗」「グッドモーニング サニーデイ」「何処へ行こう」「グッドタイミング」などです。

何となくですが、言葉遊びの回なのかも。

題名の『ライトヘビー』も含め、自分の状況に似た歌詞の曲を返してくれる斉藤さんも含め、香澄の弟の学の名前も含め、言葉遊びが巧みでちょっとだけ訳が分からなくなる回です。

題名の『ライトヘビー』ですが、ヘビーって「重い」という意味でしょ?学の階級はヘビー級なんですが、「気持ちが重い」の『重い』とかかってて、重すぎるならヘビーより軽いライトヘビー。

みたいな。

【ライトヘビー】の登場人物

美奈子彼氏無し美容師。織田由美の友人でもある
板橋(旧姓小野)香澄美奈子のお客さんで学の姉
小野学香澄の弟。リング名「ウィンストン小野」
日高美奈子の友人
寛子美奈子の友人

ここでの繋がりは、「ライトヘビー」の主人公である美奈子が織田夫妻の妻の方と友人であるという事。また、美奈子の友人の寛子は、5話の『メイクアップ』の主人公の上司として登場します。

学は、6話の『ナハトムジーク』の主人公(?)なんですが、実はけっこう重要人物。というか、いくつかの話の中でのキーパーソン的な役割です。

1話の「アイネクライネ」で出てきた野外モニターで流れていた試合は、ヘビー級のボクシングでしたね。

1度読んでしまうと、6話の『ナハトムジーク』の伏線だなって思っちゃうんですが、内容としては純粋で可愛らしい話です。

そう。大人なのに、純粋でかわいいのです。

3、【ドクメンタ】のざっとしたあらすじ

半年前に妻子が出て行ってしまい傷心中の藤間。そんな藤間は、免許の更新でいつも一緒になる女性の事を考えています。藤間もその女性もいつもギリギリでの更新で、大雑把で追い込まれないとやらない性格が似てる二人。

五年に一度の免許の更新。今年も彼女は来るんだろうか・・・。

『ドクメンタ』とは、ドイツの古都・カッセルで1955年以来5年おきに行われている現代美術の大型グループ展なんだそうです。

5年に一度。免許証の更新。

些細なことの積み重ね。相手への不満を我慢し、それが大きくなり家を出て行ってしまった藤間の妻と子供ですが、藤間は、同じような性格で旦那さんが家を出て行ってしまった免許センターで一緒になる女性の事を思い出していたんです。

彼女はあれからどうなったのか?と考える藤間ですが、その年は丁度5年に一度の免許の更新。

【ドクメンタ】の登場人物

藤間妻子が出て行き傷心中の主人公。佐藤の先輩
佐藤藤間の会社の後輩(1話「アイネクライネ」の主人公)
免許証更新で出会う女性境遇が似ている免許証更新で出会う女性
藤間の妻家を出て行った藤間の妻
課長藤間の会社の課長

【ドクメンタ】の名言

ドクメンタの物語とはあまり関係ないんですが、藤間の会社の課長が言ったセリフが響いてしまいました。

課長:藤間!離婚したんだって?どうやって!

いいか 外交問題の解決に必要なのは「どうして」じゃなくて「どうやって」なんだ

もちろん藤間は離婚はしていませんし外交問題はあくまでも例ですが、「どうして」と「どうやって」は、こんなに違うんだな。と、ハッとしてしまいました。

例えばです。子供とか後輩とかに「どうしてできないの?」と言うより「どうやってできないの?」の方が、教える側としては正しいのかと思ったり。

つまり、「Why」より「How」ですね。

うん。今度から「どうやって」と言ってみよう。

4、【ルックスライク】のざっとしたあらすじ

『ルックスライク』は大きく分けて4人の話なんですが、時系列がバラバラで、初めて読んだ時はなんだかよくわからなかった。と言うのが正直なところです。

その4人とは、高校生の久留米和人、和人の同級生の織田美緒、和人と美緒の高校の英語の教師の深堀朱美、久留米和人の父親の久留米邦彦です。

現在の4人の話の中に、学生時代の深堀先生と久留米邦彦が出てくるんですが、間で差し込んでくるから頭がごちゃっとなりますね。

ネタバレしてしまいますが、深堀先生と和人の父親である邦彦が、学生時代に付き合ってたって話。そんで、大人になって再会するって感じ。

【ルックスライク】の登場人物

久留米和人ルックスライクの主人公(?)の高校生
織田美緒和人の同級生で、織田夫妻の娘
深堀(旧姓笹塚)朱美和人と美緒の高校の英語の教師
久留米邦彦和人に瓜二つの数との父

この話の中で繋がりがあるのは、織田美緒が織田夫妻の娘ってところですが、「ナハトムジーク」の最後の最後に和人が出てくるのでお忘れなく。

【ルックスライク】の名言

ここでもやはり物語とは関係ないですが、小さく胸に突き刺さりました。

和人と美緒が、自転車のシールをはがす犯人を見つけるために駐輪場で待っている時、和人の父親が言っていたという「世界の真実シリーズ」を美緒に話す和人のセリフ。

『三十過ぎた大人の考えを変えるのは
モアイ像を人力で動かすくらい難しい』

「ハッハ~(。-∀-)確かに!!」って笑ってしまいました。

最近は求人広告に年齢制限をしてはいけないらしく書いてないことも多いですが、昔はよく見かけました「○○歳以下」とかね。35歳とか39歳とか見たことありますが、年齢を重ねていると考え方が柔軟ではなく対応しにくいからと聞いたことがあります。

そのくらい考えを変えるのは難しいって話でした(。-∀-)

駐輪場で犯人を見つけた美緒が追いかけていくんですが、和人と美緒を助けた深堀先生が言うセリフ。

正義とかそういうものって
曖昧で危ないものだから 気を付けて

そのことに対し、母にも言われるという美緒のセリフ。

自分が正しいって思い始めてきたら自分を心配しろって

あと 相手の間違いを正す時こそ言葉を選べって

うぅ💦痛い。胸が痛い!

ちょこちょこ胸に刺さることを言うわぁ。深いわぁ。



5、【メイクアップ】のざっとしたあらすじ

化粧品メーカーで働く結衣は学生のころは太っていて、亜季という女子からいじめられていました。努力して痩せた結衣ですが、取引先にいた女性は学生の頃にいじめられていた亜季でした。

自分が思っていた以上にいじめられたことが癒えてなく、亜季が学生の頃と変わっていれば自分の心も癒えるんじゃないかと思いますが、実は自分は復讐したいんじゃないかと思います。

復讐と言っても、亜季が良いと思っている人に妻子があるかもしれないことを言わないだけだったりするんですが、まぁ、かもしれないだけなので復讐にはならないのかな。

これはちょっとネタバレですが、結衣は、学生時代に亜季が好意を持っていた男子生徒と結婚しています。

【メイクアップ】の登場人物

窪田(旧姓高木)結衣メイクアップの主人公のOL
小久保亜季結衣の仕事の取引先の相手 そしていじめられていた元同級生
水谷佳織結衣の同僚
山田寛子結衣の上司。2話「ライトヘビー」の主人公・美奈子の友人

2話の「ライトヘビー」で出てくる寛子よりも大人になっています。「私の友達が世界チャンピオンと結婚してさ」と言っているので、「メイクアップ」は「ライトヘビー」よりも先の話になりますね。

後でわかりますが、結衣の夫である窪田は、3話「ドクメンタ」の藤間の妻と仕事で一緒になっています。

6、【ナハトムジーク】のざっとしたあらすじ

最終話の『ナハトムジーク』は、現在、19年前、9年前と、話が前後するので頭が混乱してしまいました。

主人公は2話の「ライトヘビー」で出てくる学。19年前に世界チャンピオンになったが、防衛戦で負けてしまいます。そして再挑戦するのが9年前。そのことをテレビ番組で話していると言うのが現在。

19年前に世界チャンピオンになった時に美奈子と付き合いだす学。これが2巻の「ライトヘビー」。

その試合を街頭のモニターで見ていたのが、1話「アイネクライネ」の佐藤。

1話「アイネクライネ」の佐藤の友人が織田夫妻で、奥さんの由美と友人なのが、2話「ライトヘビー」」の主人公の美奈子。

6話「ナハトムジーク」の19年前の話では、学と美奈子が織田家へ遊びに来ていますが、そこにサインをもらおうとやってくる予定の1話「アイネクライネ」の主人公佐藤。

3話「ドクメンタ」の話の中で、3話の主人公の藤間は佐藤から世界チャンピオンのサインをもらったと言っているので、3話の「ドクメンタ」は、この19年前の少し後の話になります。

佐藤が織田家へ行く途中にいじめられている少年を目撃し助けますが、佐藤が遅いと探しに来る織田と学。助けられた少年は、後に学が世界チャンピオンに再挑戦するときのラウンドボーイです。

9年前、学が世界チャンピオンに挑戦するとき織田夫妻の娘である織田美緒は学校の友人を誘いますが、その友人は3話「ドクメンタ」の藤間の娘です。

織田美緒は、4話「ルックスライク」で出てくる女の子です。

9年前、世界チャンピオンに挑戦する学は、ロードワーク中に、19年前に美奈子との電話で聞いていた1回100円で歌を返してくれる斉藤さんに出くわす。というシーンもありつつ。

現在、番組の司会をしている男性が自分の学生時代の話をするんですが、それは、合唱コンクールで音痴だった自分に対し先生に「歌うな」と言われたこと。そして、それを助けてくれたのが、4話「ルックスライク」で出てくる久留米和人。

1回読んだだけでは頭が「?」でした。

あれ?あの話で出てきたあの人は回収されないのね。と思ったり、おぉ!そんな回収の仕方!と思ったり。

一つ一つの物語は普通の良くある話なのかもしれませんが、最後の最後で頭フル回転で、まんまとやられた感はありますねぇ(。-∀-)。

もしかしたら、小説を読む前に漫画を読んだ方が分かりやすいのかもしれません。

っていうか、小説を読んでないんですけどね・・・(。-∀-)

久しぶりに伊坂幸太郎さん読もうかな。

まとめ

ふと思い出したのは、昔はもっとしっかりハッキリしている小説や漫画の方が好きだったなぁ。と。

いつからか、日常の普通の物語の中で感じる気持ちだったりも好きになってたなぁ。と。

『アイネクライネナハトムジーク』は日常にある物語として描かれていますが、気持ちの共感だったりが良いんです。

まぁ、まんまとやられましたけどね(。-∀-)

映画が公開されてますね。予告だけ見ましたが、映画もちょっと違う感じで描かれてるのかな?

というか、いくえみ先生の漫画「G線上のあなたと私」がドラマ化ですね。主役は波瑠かぁ。

とか言いつつ見ちゃうんですけどね。でもやっぱり漫画が好き。