心にぐっとくるアニメ

『秒速5センチメートル1話~桜花抄~』ぐっとくる名セリフ

心にぐっとくるアニメ

秒速5センチメートルは、何だか切なくて、苦しくて、甘酸っぱい。そんな作品です。

2007年の映画で、背景と音楽と、声優さんの声の良さと、全部が引き込まれる作品です。

初めて見たとき、物語の流れとしては最後まで見ても「え?」ってなってしまいました。かなり暗い感じもありますが、でもね、セリフにやられちゃう。

秒速5センチメートル

「秒速5センチメートル」は新海誠監督のアニメーション映画で、「桜花抄(おうかしょう)」「コスモナウト」「秒速5センチメートル」の3部作になっています。

1話毎の話は長くなく、3話通して全部で1時間ちょっと(63分)です。

今回はその中の1話「桜花抄(おうかしょう)」のあらすじやセリフです。

ちなみに「桜花抄(おうかしょう)」の意味ですが、桜花抄という熟語はなく、新海監督が考えて付けた題名だと思います。

桜花とは「桜の花」という意味で、抄は「文章の一部を描きだす事」「かすめとること」「注訳すること」と言う意味があります。

「桜の花のことについてとり上げる」「桜の花についての一部分」そういう意味あいでしょうか。

桜花抄オープニング

1部の「桜花抄」のオープニングは、貴樹(たかき)と明里(あかり)が小学生です。

ねぇ。秒速5センチなんだって。
桜の花の落ちるスピード。秒速5センチメートル。
ねぇ。なんだか、まるで雪みたいじゃない?
貴樹くん、来年も、一緒に桜、見れるといいね。

これはオープニングの明里のセリフですが、「まるで雪みたいじゃない?」は伏線なのかな?

 中学生の明里の手紙

一話は二人の幼少期から中学生の頃の話です。オープニングがあって手紙から始まります。

小学校の卒業と同時に転校した明里からの手紙です。

言葉もきれいで、やられます。

遠野貴樹様へ
大変ご無沙汰しております。
こちらの夏も暑いけれど、東京に比べればずっと過ごしやすいです。
でも今にして思えば、私は東京のあの蒸し暑い夏も好きでした。
溶けてしまいそうに熱いアスファルトも、陽炎の向こうの高層ビルも、デパートや地下鉄の寒いくらいの冷房も。
私達が最後に会ったのは小学校の卒業式でしたから、あれからもう半年です。
ねえ、貴樹くん。私の事、覚えてますか?

何だかかわいいですね。私も好きです。東京の夏。東京の夏の暑さが伝わってくるような書き方がうまい。

声も良いんですよね。

半年ぶりだということに、手紙を出そうか出さなないかと悩んでいたのかなあと。思ってみたり。そう思うと、余計かわいらしく感じたり。

前略、貴樹くんへ
お返事ありがとう。うれしかったです。
もうすっかり秋ですね。こちらは紅葉がきれいです。
今年最初のセーターを、おととい私は出しました。
最近は部活で朝が早いので、いま、この手紙は電車で書いています。
この前、髪を切りました。
耳が出るくらい短くしちゃったから、もし会っても、私って分からないかもしれませんね。
貴樹君も、きっと少しずつ、変わっていくのでしょうね。

貴樹も返事を出したのでしょう。

最初は「かわいいなぁ」と思っていましたが、日常の事を書いているような手紙は、変わっていくことの寂しさのようなものを感じます。

拝啓。
寒い日が続きますが、お元気ですか?
こちらはもう何度か雪が降りました。私はそのたびに、ものすごい重装備で学校に通っています。
東京は、雪はまだだよね。
引っ越してからもつい癖で、東京の分の天気予報まで、見てしまいます。

今度は高樹くんの転校が決まったということ、驚きました。
お互いに昔から転校には慣れているわけですが、それにしても鹿児島だなんて、今度は、ちょっと遠いよね。
いざという時に、電車に乗って会いに行けるような距離ではなくなってしまうのは・・やっぱり・・少し・・ちょっと寂しいです。
どうかどうか、貴樹くんが元気でいますように。

貴樹は東京。明里は栃木。

明里が転校した以来、手紙のやり取りだけで2人は会ってはいませんが、電車で会える距離を明里は近くに感じていたのかもしれませんね。本当に、いざという時には会いに行こうとしていたのかもしれません。

仲が良くてもあまり会わない友達で、海外に赴任が決まったという話を聞いて「ちょっと寂しいな」と思うような。

うん?それはちょっと違うかもな(;・∀・)貴樹と明里は、もっと深いところで繋がってる感じはします。

前略、貴樹くんへ
3月4日の約束、とてもうれしいです。
会うのはもう1年ぶりですね。なんだか緊張してしまいます。

うちの近くに、大きな桜の木があって、春にはそこでも多分、花弁が秒速5センチで地上に降っています。
貴樹くんと一緒に、春もやって来てくれれば良いのにって思います。

「ねえ、貴樹くん。私の事、覚えてますか?」
「貴樹君も、きっと少しずつ、変わっていくのでしょうね。」
「どうかどうか、貴樹くんが元気でいますように。」

「さようなら」と続きそうな最後の文章です。映画だけではなかなか深読みが難しいところです。

明里は内気な性格で、転校が続いていたこともあり友達が作れなかったのかもしれません。のちに、貴樹の言葉でもあるように「手紙から想像する明里は、なぜか、いつも一人だった」と。

手紙を書くことで貴樹を身近に感じ、一人でいることの不安を和らげていたのかもしれません。

しかし、転校を前に会いに来てくれる貴樹です。

小学生時代にさかのぼり、貴樹の気持ち

小学生の頃の貴樹と明里は、いつも一緒にいます。

僕と明里は、精神的にどこか良く似ていたと思う。
僕が東京に転向してきた一年後に、明里が、同じクラスに転向してきた。
まだ身体が小さく病気がちだった僕らは、グラウンドよりは図書館が好きで、だから僕たちはごく自然に仲良くなり、そのせいで、クラスメートからからかわれる事もあったけれど、でも、お互いがいれば不思議に、そういうことは、あまり怖くはなかった。
僕たちはいずれ同じ中学に通い、この先もずっと一緒だと。
どうしてだろう。そう思っていた。

映画では、転校してきた映像やからかわれる様子もセリフと一緒に描かれています。

子どもの頃って、世界がせまいですよね。生活範囲も気持ちも。

学校と家と近所の公園くらいがほぼだし。自分の子供の頃を思い出しても、からかったりからかわれたり。

「お互いがいれば怖くなかった。この先もずっと一緒だと思ってた。」

希望や期待とは少し違って、自然にそう思ってたというのが、まだ小学生の二人の穏やかさが見える気がします。

しかし、明里から電話があり、転校することを告げられます。

なぜか明里は「ごめんね」と言います。

耳が痛くなるくらい押し当てた受話器越しに、明里が傷つくのが、手に取るように分かった。
でも、どうしようもなかった。

貴樹は自分の無力さを感じたんだろうか。

明里の元へ向かう貴樹

雪の中、貴樹は電車を乗り継ぎ明里の元へ向かいます。

新宿駅に一人で来たのは初めてで、これから乗る路線も、僕にはすべて、初めてだった。
どきどき、していた。
これから、僕は、明里に会うんだ。

しかし、雪のせいで電車が遅れ始め、どんどん不安になっていく貴樹。

窓の外の、見たこともないような雪の荒野も、じわじわと流れて行く時間も、痛いような空腹も、僕をますます、心細くさせていった。
約束の時間を過ぎて、今頃明里は、きっと不安になり始めていると思う。

あの日、あの電話の日、僕よりもずっと大きな不安を抱えているはずの明里に対して、優しい言葉をかけることのできなかった自分が、ひどく、恥ずかしかった。

そうか。自分の無力さではなく、恥だったのか。

明里からの最初の手紙が届いたのは、それから半年後、中一の夏だった。
彼女からの文面は、すべて、覚えた。
約束の今日まで2週間かけて、僕は明里に渡すための手紙を書いた。
明里に伝えなければいけないこと、聞いてほしいことが、本当に、僕にはたくさんあった。

2週間かけて書いた手紙を、貴樹は風で飛ばされてしまいます。

そのことでますます不安になったのか、泣きそうになる貴樹。

止まってしまう電車。

手紙から想像する明里は、なぜか、いつも一人だった。

電車はそれから結局、2時間、何もない荒野に止まり続けた。
たった1分がものすごく長く感じられ、時間ははっきりとした悪意を持って、僕の上をゆっくりと流れて行った。
僕はきつく歯を食いしばり、ただとにかく、泣かないように、耐えているしか、なかった。
明里、どうか、もう、家に、帰っていてくれれば、いいのに。

「あの電話の日、僕よりもずっと大きな不安を抱えているはずの明里」とありますが、実際に、本当の明里の不安が分かったのが、この電車だったのではないかと私は思いました。

中学1年生です。1人で初めての新宿、初めての路線、電車の遅れ、何もない荒野に止まってしまう電車。

本当に心細くて不安だったに違いない。そんな状況になって、転校する明里の不安、いつも一人だったという明里の不安、自分が乗っている電車が着くか着かないか分からない明里の不安。

もう、不安にならないで。の、「明里、どうか、もう、家に、帰っていてくれれば、いいのに。」なのかもな。と。

明里と再会した貴樹

やっと駅に着いた貴樹ですが、明里が待っていることに驚きます。

明里は泣いてしまいます。

私は、

夏に耳まで出るくらい短くした髪は、そんなに伸びるのかね。

と、不思議に思います。

二人は、明里の作ってきたお弁当を食べ、駅が閉まってしまうため雪道を歩きだします。そこで、以前明里が手紙に書いた桜の木の前につきます。

まるで、雪みたいじゃない?

キスを交わす二人。

その瞬間、永遠とか 心とか 魂とかいうものがどこのあるのか、分かった気がした。
13年間生きてきた事の全てを分かち合えたように僕は思い。それから、次の瞬間、たまらなく、悲しくなった。
明里のそのぬくもりを、その魂を、どのように扱えばいいのか、どこに持って行けば良いのか、それが僕には分からなかったからだ。
僕たちはこの先もずっと一緒にいることはできないと、はっきりと分かった。僕たちの前には未だ巨大すぎる人生が、茫漠とした時間が、どうしようもなく、横たわっていた。

でも、僕を捉えたその不安は、やがて緩やかに溶けて行き、後には、明里の柔らかな唇だけが残っていた。

むずかしい言い回し。大人の漫画だと思いました。でも、それがわかるからたまらなく心に響いてきます。

え?本当に分かってる?私。

たまりません。切ない。子供にはその距離は遠過ぎるし、それをどうにもできない事を知っている。

という大人な子供です。

13歳じゃこんな風に思わないよ!

いや、思うか。13歳なら思うかもなぁ。思っても言葉にすることができなかったな。語彙力乏しすぎて。

中学生だから精神的に弱い所も分かりますが(不安感とかね)、言葉が大人だからアンバランスなんですよね。そこが「秒速5センチメートル」の魅力なんだとも思います。

帰りの電車で、貴樹と明里

畑のわきにあった小さな小屋で過ごした二人。

なんとなく、「北の国から87初恋」の純とレイちゃんを思い出してしまいました。

朝になり電車に乗る貴樹。貴樹にむかい、明里は言います。

貴樹くん。
貴樹くんは、きっと、この先も大丈夫だと思う。絶対。

初めて見たときのこのシーンは違和感でした。

「また会おうね」でもなく、「手紙書くね」でもなく、「大丈夫」なのです。

明里への手紙を無くしてしまった事を、僕は明里に言わなかった。あのキスの前と後とでは、世界の、何もかもが変わってしまったような気がしたからだ。
彼女を守れるだけの力が欲しいと、強く思った。それだけを考えながら、僕はいつまでも、窓の外の景色を見続けていた。

これはねぇ、是非小説を読んでみて下さい。

まとめ

ここで1話の「桜花抄(おうかしょう)」は終わります。不安な気持ちを持ちつつも、気持ちが未来に繋がってます。意思が感じられるというか。

まだ今は。でもいつか。みたいな。

私は、そんな風に感じました。

ああぁぁ~~戻りてぇ~~。馬鹿じゃなく、ちゃんと分かる子供時代にした~い。

希望とか絶望とか、自分の意志とか。分かるようになりたい。

いや、中1でそう思えるようになってたら、それはそれで大変か(;’∀’)

きゅんと切なくなる1話です。

ざっくり切り取っていますが、映画では情景や電車などもかなり細かく描かれていて、そういう点に注目してもおもしろいです。

聖地巡礼したくなります。

「秒速5センチメートル」漫画・小説

「秒速5センチメートル」は、漫画は巻で完結。小説も出てます。

映画を見ても良く分からなかったなぁ。という人は、漫画や小説を読んでみると納得していただけると。私は思います。

秒速5センチメートルが見られる動画配信

「秒速5センチメートル」は、多くの動画配信で取り扱っています。

新海誠監督作品のすべてを取り扱っているところもほとんどだと思います。

・Amazonプライムビデオ
・hulu
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など

YouTubeやGooglePlayからでも購入が可能です。