心にぐっとくる本

【〆切本】作家たちの言い訳がたまらなくぐっとくる&共感!

こころにぐっとくる本

以前、山本夏彦さんの「世は〆切」という本を読んで、その流れで読みたいと思っていた【〆切本】をやっと読みました。

お、おもしろい(; ・`д・´)

文豪、作家、漫画家たちの何とも言えない言い訳がずらっと書いてあるんです。

しかも、編集者の言葉も書いてあるから、なんとなくその関係性もおもしろい。

昔の言葉をそのまま使ってるところもあるので立ち止まってしまうことは少々ありますが、作家ごとに書かれているので読みやすい。

350ページ以上の厚い本ですが、何度共感したか!

【〆切本】の内容

〆切本の内容は、大きく5つに分かれていて、

1、書けぬ、どうしても書けぬ
2、敵か、味方か?編集者
3、〆切なんかこわくない
4、〆切の効能・効果
5、人生とは〆切である

これだけ見ても読みたくなってしまいます。それぞれ作家や漫画家が出てきますが、題名もあって分かりやすい。

パラパラっとめくって思ったのは、「〆切」っつったら小学生の頃の夏休みの宿題。

と思ったら、冒頭でも書いてあったし、何人かの作家が同じように「夏休みの宿題」を用いて書いてありました。

しめきり。
そのことばを人が最初に意識するのは、おそらく小学生の頃の夏休みの宿題です。
青空に照りつける太陽、たちのぼる入道雲。残りの休み日数と手つかずの宿題を思い、
「あーあ、もうあきらめちゃおっかな」
と、手放しかけたときに〆切というヤツは鬼の形相でギロリと目を光らせるのです。
~省略~
あれほど追い詰められて発狂寸前まで苦しんだはずなのに、いつの間にか叱咤激励して引っ張ってくれている、〆切とは不思議な存在です。

すでに笑ってしまったのです。

共感できる!でも、発狂寸前までもがいてはいなかった!と。

もしかしたら、「〆切本」に出てくる作家たちは発狂寸前、いや、発狂しながら苦しんでいたのかも。

そんな「〆切本」は、「〆切参考書」なんだそう。

1、書けぬ、どうしても書けぬ

ほぼ、文豪や作家たちの言い訳。が書いてあるのが1章。

・田山花袋・夏目漱石・島崎藤村・泉鏡花・寺田寅彦・志賀直哉・谷崎潤一郎・菊池寛・里見弴・内田百聞・吉川英治・獅子文六・梶井勘次郎・江戸川乱歩・横光利一・林芙美子・稲垣足穂・古川ロッパ・幸田文・坂口安吾・高見順・長谷川町子・太宰治・松本清張・大岡昇平・小山清・吉田健一・木下順二・遠藤周作・山口瞳・田村隆一・吉田淳之介×筒井康隆・野坂昭如・梶山季之・有吉佐和子・藤子不二雄Ⓐ・後藤明生・内田康夫・井上ひさし・佐木隆三・赤瀬川原平・浅田次郎・高橋源一郎・泉麻人・大沢在昌・新井素子・吉本ばなな・西加奈子

笑ってしまったもの、共感してしまったものをいくつか。

谷崎潤一郎「私の貧乏物語」

谷崎潤一郎自身が貧乏である理由が「遅筆」である。というところからはじまります。

私の遅筆はそんな特殊な理由よりも、主として体力の問題なのである。私はじつと一つのことを考え詰めると、精神的にも肉体的にも直きに疲労する。だからニ十分と根気が続かない。これは若い時分から糖尿病があるせゐなのだと思ってゐるが、兎に角そんな次第であるから、

この先もつらつらと言い訳(?)が書いてあります。

そのせいなのか、原稿に集中できず他のことを色々としてしまうという。気を変えないと集中できないという。しかも、遅筆を病だと言っている。

「ま、持病じゃ仕方ないよね」

・・・ってなるか~い!

完全に期末試験前の学生です。試験勉強と本を書くのとは違うかもしれないですが、何だか共感してしまいました。

菊池寛「新聞小説難」

書くことが苦になってきているとい言い訳です。

自分は朝だけしか仕事ができない。新聞小説は、四枚書けばいいのだが、とりかかる前に、二時間や三時間は、直ぐ潰れる。後は、仕事が苦しいだけに二三時間は、ボンヤリする。

特に「〆切に間に合わない」と言う様な事は書いてないのですが、とにかく苦痛なんだろうという事は分かります。

他のことをしてしまう作家に比べ、どちらかと言うと集中型なのかもしれない。

集中しすぎるあまり脳がオーバーヒート型。

仕事の仕方は色々だけど、確かに集中して他のことが何もできなくなることもありますよね。それが続くと考えただけでも苦痛になるのは、なんだか分かるような。

吉川英治「手紙 昭和二十六年」

河上君 今日 じつは自分が社に伺ふか、又は普でも頼まうか いろいろここ数日間 考えてゐたのだけれど 手紙にしました
手紙でないと 君には 面とむかふと いつもなかなか云い切れないものだから・・・
小説
どうしても書けない

これ、編集者へ送ったであろう手紙の冒頭なんですが、めちゃくちゃ正直じゃん!

と思いきや、年齢のせいや気持ちのせいや健康のことも言い訳のように書いてあります。

「おお、やっぱり言い訳か!」って思ったけど、構成がイイ!

まず正直に「書けない」と言う。そして、謝る。その後に言い訳をする。そんでもって、

こんなぼくぢゃなかつたのだけど

などという。さらに謝る。

勉強になったぞ。そういう構成で話を組み立てればいいのか!

「本当の私は、こんなんじゃないんですけどね」なんて今度言ってみようと思いました。

長谷川町子

「サザエさん」の長谷川町子さんですが、漫画で描かれています。

ちなみに、書いてある内容が、どの本の何ページに書かれていたかという詳細が一番最後にしっかり記載されているのも、この「〆切本」の素晴らしさです。

〆切本に描かれているのは、「サザエさんうちあけ話」のもの。

ふだんは二日前に渡しますが、今日は電報。
あしたの朝刊に出るので清書なかばで「ゲンコウできました」と、朝日にデンワします。
オートバイがかけつけるのに約、三、四十分。
ところができあがったカツオの表情が、どうにも気に入りません。

いそがしい人を待たせていると思うと、ドッと汗が、ふき出します。
そんなときにかぎってネコがのそべったりして、じゃまをする。

こんどこそ仕上がり。
フウトウをとり出す。
気に入らないほうは四つに引きさく。

ハッ!!頭が冷たくなる。
書き直しの方をやぶったのです。

さんざんまってもらって不出来の方を
渡したあとのその気分のわるさ
お酒の飲める人は、はっさんできてウラヤマしい
どのミチきびしいものですネ

(所々省略してます)

かわいい!可愛すぎるぞ長谷川さん。あるある。焦ってドジることって。長谷川町子さんのエピソードというより、完全にサザエさんじゃないか!?

4ページしかないないんですが、色々心の中で突っ込んでしまう。サザエさんで育ってきた私は、どうしても印象深いこのページ。

ピアノの先生のお家に「サザエさん」や「いじわるばあさん」が置いてあって、待っている間は毎回読んでたなぁ。って懐かしくなってしまいました。

多分、平仮名と漢字とカタカナが一緒になっているのに慣れたのも、長谷川町子先生の漫画のおかげだと思っています。

〆切の言い訳ではありますが、かわいいエピソードでほっこりしてしまいました。

遠藤周作「私の小説作法」

朝はたいてい九時には机に向かう。昼食の時間を除くと、日が暮れて窓の向こうが暗くなるまで腰かけている。しかし、その間、仕事をしているのではない。大半の時間は、机に向かっているが、鉛筆をいじったり、パイプを掃除したり、同じ新聞を何度も何度も読みかえしたりしているのだ。正直な話、私は毎日、イヤイヤながら仕事をしているのだ。

笑ったわぁ。

こんな風に言えたらいいなって思ったわぁ。

なんですが、毎日仕事のことが頭に引っかかっているという遠藤周作先生。

どうやらこれは、原稿を書く前の準備のようです。頭の中で組み立ててからじゃないと書き出さないという事らしい。

でも、やっぱり嫌だ。ということも書かれています。

健康にこの仕事が悪いことはつくづくわかる。

と。

学校に行くまでは面倒で、行ってみたら案外そんなことはなかった。って感じなのかと思ったら、やっぱり学校楽しくない。みたいな。

まぁ、実際にそうやって作家を辞める人もいるのでしょう。

高橋源一郎「作家の缶詰」

自分が「缶詰」になっていたこと。なぜ作家は「缶詰」になるのか。などが冒頭で書いてあります。

ほとんどは、仕事をしたがらない。だいたい作家などというものは、通常の仕事も耐えられないから作家になったのだ。朝早く起きられない。満員電車の通勤に耐えられない。他人がこわい。力がない。こういう人間は作家にでもなるしかない。

めちゃくちゃ偏見じゃん!と笑ったけど、実際に満員電車が苦痛で朝が苦手な私は、午前中の遅い時間に始まる仕事についている。

あながち間違いではないのかもしれないですね。

ふと思い出したのが、角田光代さん。

情熱大陸だったかな。作家ながら9時5時でOLのように働くという。しかも、家ではなく事務所を別に借りて通うんです。夕方からは、しっかり友人たちと飲みに行く。

作家とは言うものの、色々あるんだな。

高橋源一郎さんの言い訳が素敵で、

「ええ、あの、ちょっと風邪気味なもんで、今日中になんとか」

「いや、風邪はなんとか治ったんですが、こんどはワイフが風邪をひいちゃって、家事をしなくちゃいけないもんで。でも、今日中になんとか」

「申し訳ない。ワイフの風邪は治ったんだが、ワイフの祖母が風邪をひいたんで実家に看病に行ったら、その間に猫が風邪をひいちゃって・・・」

缶詰になって○○日目。なんてのも書いてありますが、食べ過ぎて眠くなってしまう、インクリボンがなく仕事ができない、持ってくるのを忘れた。などなど、笑ってしまう言い訳がずらっと。

本当に小学生みたいだな。

西加奈子「肉眼ではね」

大好きな西加奈子。やはり言い訳も一味違います。

仕事柄、何かを考える時間が多い。
といって、小説のことだけではない。
最近考えたのは、編集者に使える「便利な言葉」である。遅れた原稿、大幅な修正、それを求める編集者へ、なんと言ったらうまいこと回避出来るか。

そこで西さんが考えたのが、タイトルにある「肉眼ではね」。

確かに、毎回「あぁ、なんて言い訳しよう」と考えるより、良いフレーズがあったら便利で楽だな。

最近やってた「水曜日のダウンタウン」の中で、【「いい意味で」をつければどんな悪口でも怒られない説】というのを見て、なんか通じるものがある。と思ってしまった。

なるほど。便利な言葉はいいかもしれない。

「仕事が忙しい」では全く便利な言葉になりませんが、なにか見つけたいと考えてしまいました。

そういえば、学生の頃、遅刻の理由を「向かい風が強くて」と良く言ってたな。

アメトーークの「高校中退芸人」の中で、宮下草薙の草薙さんと言う芸人さんが、バイトを休む理由を「良い絵が描けそうで」って言ってて笑った。めちゃくちゃセンスがイイ。

良いワード。見つけたい。

2、敵か、味方か?編集者

締め切りに加え、編集者とのあれやこれやも書かれているのが、この2章。

編集者の立場からも書かれていておもしろい。

・川端康成・横光利一・埴谷雄高・上林暁・扇谷正造・梅崎春生・胡桃沢耕史・手塚治虫・深沢七郎×色川武大・嵐山光三郎・岡崎京子・阿刀田高・永江朗・川本三郎・高田宏・原卓也・村上春樹

梅崎春生「流感記」

〆切が迫る中、熱が出てしまったという梅崎春生先生。

原稿の催促をしに来た編集者に対し、

家人が出て、熱が八度五分もある旨を伝えると、あと三日間でどうしても一篇仕立てろ、との答えだったそうだ。つまり田辺君は私の病気を、にせ病気だと疑っているのである。

なぜ疑うか。というのも書かれていますが、やはり嘘。熱は出ているが本当はそこまで熱が高くないという。

編集者が部屋に来て、薬や体温計が置いてあり、「田辺君ががっかりしたような」と書かれていて、なんとなく、作家と編集者の関係性、編集者の人柄が見えるのがおもしろい。

田辺君。

「ほんとに風邪を引いたんですか」

学校へ行きたくない子供が「熱があるみたい」と、母親へいうところをなんとなく想像してしまいました。

水銀の体温計の先をこすって熱を上げるような。(オムロンになってから体温が上がらなくなり泣いたのは私)

数ページの内容ですが、田辺君が好きになってしまいます。

3、〆切なんかこわくない

3章では特に、小心者で〆切を守ってしまう作家たちが多く書かれています。

・山田風太郎・三浦綾子・山口瞳・笠井潔・吉田昭・北杜夫・中島梓・森博嗣

笠井潔「早い方・遅い方」

どうやら、作家にとって「筆が遅い」というのはかなり言い訳できるみたいです。

自分では早い方なのか、遅い方なのか分からないという笹井潔先生。あっけらかんとしているように見えてイイです。

昼間はコーヒー、夜は酒を手元に置いて、ステレオのスピーカーの前に据えた安楽椅子に凭れ込んで、レコードを聴きながら仕事と関係のない読書をする。
~省略~
夕方になると駅前のスーパーまで自転車で買い物に出かけ、
ついでに本屋を覗いて、戻ってから夕食を作る。片付けを済ませ、テレヴィで歌謡番組などを眺めてから風呂に入り、それからまた安楽椅子、いいかげん酔ったところでベッドへ・・・。

最高の日常。

「怠惰なる日々が」と書いてあるのですが、軌道に乗ることもあると書いてある。

ルーティンってあるよね。

っておい。

社会人だったら、「気分がのらないときにどうするか」「気分を上げるにはどうするか」「どうやって効率の良い仕事が出来るか」など検索することもあるでしょう。

色々やってみたけど、自分は出来ないし自分はコレなんだっていうのが多いっぽい作家たち。

作家とはそういう生き物なんだな。と今まで読んでいて思ってましたが(なんならずっと思ってましたが)、笹井潔さんのはそういう感じがない。

のほほんとしているのかな?と思えばそんな感じでもなく、流れに身を任せているようで親近感。

4、〆切の効能・効果

「効能・効果」って。と笑ってしまいましたが、一番好きな4章。

言い訳がましい作家たちもかなりおもしろいのですが、論理的に書かれているのはおもしろい。いや、大学の教授や心理学者が書いているからかもしれないです。

外山滋比古・樋口収・堀江敏幸・大澤真幸

外山滋比古「のばせばのびる、か」

仕事をするのは気迫である。
いくら時間があっても、それで仕事ができるものではない。

と、冒頭から納得してしまった外山滋比古さんは、お茶の水女子大学名誉教授である。

人間だれしも遊んでいたいというのはやまやまである。働くこと、仕事をするのはつらい。できれば避けたい。いよいよ避けられないとなると仮病ではなくて本当の病気になる。Rさんのような正直なケースは珍しいが、たいていの人が多かれ少なかれ、仕事への抵抗をもっている。その抵抗をどうしてとりのぞくか。それで人生が変ってくる。

R氏。という、遅筆で有名な作家を例に取り上げていますが、それがものすごく共感できてしまう。

一文字もかけない。時間だけは流れる。発熱。気分が悪い。引き揚げると熱は止まる。など。

就職したころ、冷静になって考えていたつもりが全く冷静でなくて、脳がショートしたのか知恵熱のような熱を出すことがよくありました。

そのころは、「大人でも考えすぎると知恵熱が出るんだな」くらいにしか思ってなかったのですが、なるほど、仕事に抵抗があったのか。なんとなんと納得してしまいました。

大学生の論文についても書かれていますが、大学の論文は締め切りが厳守で、間に合わないと一年論文留年する学生もいるんだそう。

仕事にかかるのは気迫だが、仕事をし終えるには諦めが必要である。大論文を書こうと思ったら決して完成しない。出来るだけの努力はする。あとはもう運を天にまかせる。不出来であっても仕方がない。そう思い切るのである。色気をすてる。そうすれば案ずるより生むはやすし、である。

論文のことではありますが、少し、救われたような感覚になりました。

苦しくなるのは、自分では思っていないけど完璧主義だからなんだろうな。

タイトルの「のばせばのびる」は、力量でも経験値でもなかった。〆切のことでした。

先延ばしにした仕事は、やりにくくなる。とも書いてありました。

ひとやすみ付録

4章の「〆切の効能・効果」の後に、ページではありますが「ひとやすみ付録」がついています。

ついていると言っても切り離すようなものではありませんが、「あなたの先延ばし度は?」と書かれている付録。

もちろんついやってしまった。

その辺もおもしろい「〆切本」です。

5、人生とは〆切である

締め切りに関してではありますが、作家の人生観のようなものが書かれているという印象を受ける5章。

・小川洋子・米原万里・金井美恵子・車谷長吉・轡田隆史・池井優・谷川俊太郎・星新一・黒岩重吾・池波正太郎・山本夏彦・柴田錬三郎

米原万里「自由と言う名の不自由」

「自由にやってイイよ」「お任せします」などと言われると手が止まってしまう私は、「いろいろ制限がある方が仕事がはかどるし、面白い」と書いてある、米原万里さんのこの文章を読んで腑に落ちました。

実際に、テーマが決まっていれば早くかけ、自由が与えられるとテーマを決めるまでが一苦労。という米原万里さん。例えが分かりやすかったです。

型のない自由なダンスを踊る時もそうだ。音楽に合わせ身体をくねらせるだけの、誰もが動かしやすい動作をするものだから、みんな同じ踊りになって、見ている方も退屈だし、本人もすぐに飽きてしまう。
一つ一つの動きにいちいち細かく厳しい型があり、それを身につけるのに何年もかかるような不自由な思いをして身につけた踊りほど、自己表現も自在だし、踊っている最中の解放感も大きく、したがって満足度も高い。型を身につける過程で、そのままだったら知らなかった仕草、使わなかった筋肉を使いこなすようになるために、より自由の利く範囲がいつのまにか拡大していることに気付く。
不自由な方が自由になれるのである。

ああ、「基本、型の先に自由がある」と言っていた野村萬斎と一緒だな。

文章を書くというのは才能なのかもしれませんが、やはり基本があるんだろう。まさに守破離なのかもしれない。

自由に動く、「あれ?もしかして私、才能ある?」、基本や型を学んだら動けなくなる、「やっぱり私には才能なんてなかったわ」と諦める。

なんだか想像できる「夢」のあり方。

生き方についても色々考えてしまった分でした。

まとめ(その他にも)

90人以上の言い訳や考え方が載っているので、読んでいて少し自分が混乱してしまう感覚になりました。

いや、じっくり読みたいし、知らない作家もいたので、「裏はこうだったのね」と、その人たちの作品を読みたくなってしまいました。

上に書いた人以外にも面白いものはたくさんあって、

・最近の作家は忙しくて集まりにも参加できない。「日本文士はナマケモノと相場がきまっていた。」という獅子文六の決めつけ。

・原稿の依頼を引き受けることで起こる病について。病原菌の潜伏期間などと言い、自分が患者で、原稿枚数や締切日までの日数などを等式にしてしまう井上ひさし。

・小学生の頃から夏休みの宿題を早く済ませていて、締め切り前には必ず編集者に渡すという、自称「小心者」で二十日前に「早くてすみませんが・・・」と添え書きしてしまう吉村昭。

・「勉強意図と締め切りまでの時間的距離感が勉強時間の予測に及ぼす影響」と、論文のような長いタイトルで書かれている樋口収さん。人間は将来のことを思い描くとき、楽観的だというのはかなり読みごたえがありました。おもしろかった。

など、その他もろもろ。

「背中を押してくれる」と何かの紹介文にもありましたが、本当にそうでした。

〆切本2も出ていて、早速読みたい。