心にぐっとくる詩

加島祥造『求めない』がぐっとくる

心にぐっとくる詩

加島祥造さんの有名な詩集です。

とはいっても、実はほかの作品を読んだことがないんです。

この「求めない」も、話題になったから読んだのか、たまたま手に取ったから読んだのか覚えていないほど随分前に読んだもので、その時はさらっと流していました。

「求めない」は大人向け(?)

最近また、手にする機会があって読んでみました。

読み直すというのとは少し違う感じです。

以前は流していたから覚えていなかったので、新しく読む。と同じでした。

サラッと読んだものでも、心の中に入り込んでくるものってあると思うんですが、以前よりグサグサ刺さってくるんです。

以前は分からなかった感覚が分かるようになっているという、あの頃の自分とは違う自分がいるな。と思わされる作品でした。

もう、ぐわっと心に入ってくるというか、1ページ1ページ丁寧に読んでしまい、染み込んでくる感じです。

それは、私が成長したからなのか、歳を取ったからなのかは分かりませんが、ちょっとだけ大人になったと感じ、嬉しくなるものでした。

はじめにこう書いてあります。

誤解しないでほしい。「求めない」と言ったって、どうしても人間は「求める存在」なんだ。
それはよく承知の上での「求めない」なんだ。
~省略~
五欲を去れだの煩悩を捨てろだのと あんなこと 嘘っぱちだ、誰にもできないことだ。
「自分全体」の求めることはとても大切だ。ところが
「頭」だけで求めると、求めすぎる。「体」が求めることを「頭」は押しのけて別のものを求めるんだ。
しまいに余計なものまで求めるんだ。

解釈するのが少し難しいです。

解釈というか、この文章を読んで「あぁ、その感覚分かる」となるかな?ということ。

自分自身を分かっているということ。だと思います。

やはり、若い自分には無かった感覚です。

というか、自分で自分が求めすぎているなんて知ることもなかったな。

でも、いまでも思います。それは若いパワーですよね。若い生命力だと。

加島さんのあとがきにも、60代でノートに書いたもののそれを忘れていて、80歳になるころ思い出して読み返してできたものだとおっしゃっています。

そりゃ10代や20代では分からないや。

求めない

求めない
すると
それでも案外生きていけると知る

 

求めない
すると
キョロキョロしていた自分が
可笑しくなる

 

求めない
すると
自分の好きなことができるようになる

 

求めない
すると
自分を客観できるんだ

 

求めない
すると
もっと大切なものが見えてくる
それは
すでにもっているもののなかにある

 

求めない
すると
失望しない

 

求めない
すると
比べなくなる
(ひとと自分を 過去と今を 物と価値を 持つと持たぬを)

 

求めない
すると
もともと、求める気なんかなかったと知る
そそのかされたから
根のない恐れに駆られたから
虚栄にそそのかされたから求めたんだ、
と知るよ

色んな経験が求めなくなることや物があるんだなと、実感しました。

例えば、会社に行くのに電車に乗る自分がいるとして、急いでいたり、苛立っていたりします。

休みの日に電車に乗るときは時間も気にしていないし、だからこそ人の動きが気にならなくなりますが、その時に、平日の自分を客観できたりすることがあります。

小さなことの中でも、気づかされていたのかな。と思います。そういう感覚は流してしまいがちです。

「失望しない」も自分と照らし合わせて、そうだなぁ~と思いました。

人でもモノでも、期待するから失望がやってくる。

 

分かるということ。それを素通りさせないこと。求める前本当に必要か考えること。

そして、あえて「求めない」ということをしてみるということ。

「求めない」ということで楽になったり、世界が広がるのが分かる気がしますが、これが中々できません。

まぁ、無理してすることでもないのですが、違う自分がいることを知りたいと思ってしまいます。

でも、これって、求めているということなのかな?