横山秀夫さんは、ミステリーを得意とする作家さんですが、実はミステリー系の本が読めなかったんですよね。
ミステリーにもよるんですが、友人が貸してくれた横山秀夫さんのミステリーはダメだった。
面白くないんじゃないんです。
そういうのではないんですが、話が頭に入ってこなくて読めなかった。
でも、他の作品は読めるのもあります。
その中で「クライマーズハイ」は入りやすかった。
「クライマーズハイ」
クライマーズハイは、ドラマにも映画にもなりました。
私は本を読む前に映画を見ていたので、入りやすかったのかもしれません。
日航機墜落事故に関わる新聞社の人々を書いた本です。
1985年、事故は起こりました。
まだ幼かったので、当時のニュースや新聞などは記憶にありません。
それでも8月になると特番がくまれたりしていたので、いかに悲惨な事故だったのか大人になってから知りました。
映画では滝藤賢一が素晴らしい演技で私の目を引いたのを覚えています。
それからですね。滝藤賢一さんが色んなドラマや映画で見かけるようになったのは。
本当に素晴らしかった。
映画は、堤真一さん、山崎努さん、堺雅人さんなどキャストも豪華です。
そんな作品の中で、何度見ても、何度読んでも、どうしても泣いてしまうシーンがあります。
御巣鷹山に入り、その思いをリアルに書いた文脈です。
御巣鷹山にて
若い自衛官は仁王立ちしていた。
両手でしっかりと、小さな女の子を抱きかかえていた。
赤いトンボの髪飾り。
青い水玉のワンピース。
小麦色の細い手が、だらりと垂れ下がっていた。自衛官は天を仰いだ。
空はあんなに青いというのに、
雲はぽっかり浮かんでいるというのに、
鳥は囀り 風は悠々と尾根を渡っていくというのに。自衛官は地獄に目を落とした。
そのどこかにあるはずの
女の子の左手を探してあげねばならなかった。
情景が頭の中にこびりついてしまい、何度も何度もその分だけ読み返してしまう。
実にリアルに伝わってくる。
いや、そんな情景なんて見たことがないのに、見たことがあるかのように頭に浮かんでくる。
なんとも壮絶な場面だろうに、音がない。
風の音と、鳥の声だけが聞こえてくる。
自衛官の思い、新聞屋の思い、色んな人の気持ちなども考えてしまい涙が止まりませんでした。
単語なのに、その部分にピントが当たって、絵がズームしたような錯覚になってしまう書き方は素晴らしい。
最近は各国でのひどい事件なども非常に多く、そのニュースを見るたびに受け身になって考えてしまいます。
そんな考えさせられる一冊です。