心にぐっとくる本

ぐっとくる『奥田英朗~サウスバウンド~』

こころにぐっとくる本

奥田英雄さんの作品は好きで、割とチェックしているつもりでした。

本屋で見つけて、「あれ?あれあれあれ?読んでないぞ!?」

ってな訳で即買い。

サウスバウンド

「サウスバウンド」は、2006年に発売され、植木賞受賞し、さらに本屋大賞2位になっている作品です。

そして、2007年には映画化されています。

なのに、そんな有名な作品なのに・・・読んでなかった~~!!

文庫で、上・下巻出ているんですが、上巻は買ったその日に読んでしまいました。

やはり、奥田さんの作品は読みやすい。

この本は特に、子供目線で書かれているので余計読みやすいかもしれないです。

・小学6年生の主人公。
・会社員だったことがない父。
・喫茶店で働き家計を助ける母。
・OLの姉。
・小学4年生の妹。

そんな家族を中心に、主人公の生活の時間の流れが描かれています。

本当にさらっと上手く書かれていて、入り込みやすい。

そして、やっぱりこころにぐっとくるところがあります。

父親と主人公の掛け合い

「お父さんは旅に出ました。どこか南の島です。海べりの丘に家を建て、畑を耕し、収穫の季節になる頃、ぼくたち家族を迎えにくると言っていました。」
作文を朗読するように言葉を連ねる。「外のばばあにそう言ってこい」

国が嫌い、税金なんか払わない。そんな父親が社旗保険庁から来た人に居留守を使い、子供に言わそうとする場面です。

言いかけがちょっと面白いです。

口の悪さよ!まあ、そこは仕方ない。

ここを読んだ時。”あっ!言い訳にもセンスが必要なんだ!”と思いました。

最近は、自分に言い訳をする場面がなくなったのですが、いつか来る、言い訳をしなければならない日に向けて、必死で考えてみます。

・・・言い訳を。

母親の言葉

ジーンズはまずいでしょう。母はそう言って、中野ブロードウェイで買っていてくれたのだ。
紺のポロシャツの胸には馬に乗った人の刺繍がついている。
本物だってとぼけてればいいから、と気になることを母は言った。

母親もなんだか笑えるんです。

これは、主人公が同級生の女の子の誕生日会に呼ばれた時の事です。

思わず、プッっと笑ってしまいました。さすが母ちゃん!

今は、少なくなってきたのかもしれないですが、昔はそんなのを着た小学生なんかたくさんいました!

私も、知らずに着ていたものは多々あります。さすが母ちゃん!

そんな事を思い出したりしながら、読んでました。

たまに、鋭い事を言う父親

「黒木って親はいるのか」
「小学生のしゃべり方じゃなかったからな。一人で生きてる、そんな感じだったぞ」
感想が見つからなかった。声でそんなことがわかるものなのか。
「そういう友人は大事にしろ」

主人公の、家庭に問題のある友達から電話を受けた時

なぜだか、ちょっとぐっときてしまいました。

たまに、こういう大人がそばにいてくれるとうれしいなって思います。

金八先生とか。

金八先生は普段から口はさみっぱなしですけど。なんて言うんでしょう、見てないふりして、ちゃんとわかってるって言うか、細かい事に気づくと言うか。

そんな大人。

そして、そんな大人になりたいな。

主人公の気持ち

でもいい。小学生の自分に責任などない。
大人が子供の世界で無力なように、子供は大人の世界に立ち入れないのだ。

父親の友人だというおじさんがいて、居候をしているんですが、警察に狙われています。

そして、主人公も理由はわからないまま、おじさんと仲良くなっていくんです。

おとな子ども!!

小6の頃、そんな風に考えれらなかった!!

本の中で、主人公の思いや考えはずいぶん大人なんです。

子どもの頃、もっと大人の考えだったら、今、もっと大人だったかな~。(私、どんだけ幼稚なんだ!!?)

こんなことも言っています。

南先生から児童相談所に「戻らなくていい」と連絡があったのだ。冷たいよな。ため息が出た。
教師が、やけに人間臭く思えた。人間が親切なのは、自分が安全なときだけだ。

!!なんだろうこの鋭さ!!

これだけ、大人な子どもだったらもっと偏屈になってもおかしくないんですが、主人公は全然そんな風ではないんです。

私なら、もっとっも~~っとグレると思う。

ちょっと深いよな。自分が人に優しくするときはどんな時?って考えてしまいました。

きわめつけはコレ

別れは、淋しいことではない。出会えた結果のゴールだ。

小学校の友達と離れることになった時。

末恐ろしい子供だよ!まったく!!

大人だけど、こんな風に考えられなかった。

でも、旅行が好きで、行けば行くほどこう思うようになりました。

留学中とかに、クラスの子が何人も帰国するのがめちゃくちゃ寂しかったんです。

これは慣れなのかな。

父親がそんな主人公に言うセリフです。

「前にも言ったが、おとうさんを見習うな。おとうさんは少し極端だからな。
けれど卑怯な大人にだけはなるな。立場で生きるような大人にはなるな。」
「これはちがうと思ったらとことん戦え。負けてもいいから戦え。
人とちがっていてもいい。孤独を恐れるな。理解者は必ずいる。」

なんとも。泣きそうになる言葉です。

分かってても出来ないですよね。父強し。

自分を見つめなおしてしまいました。

やっぱり、こういうのにぐっときてしまうなぁ~。

 

そんなおもしろ家族の、おもしろ話。

でもときどき、リアルに真面目。

そんな一冊です。

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