やはり面白い。
このところずっと西さんの本ばかり読んでいますが、やはり面白い。
前回の「きりこについて」もそうだったんですが、ほんわかした中に何かがあります。
それは、壮大だったり、そうじゃなかったりするけれど、何かこう、ぐっとくるものが隠されています。
円卓
「円卓」は、2011年の作品で、2014年に芦田愛菜ちゃん主演で映画化されています。
小学生が主人公なんですが、大人になって忘れてしまっていることの多さをずいぶんと考えさせられるものがあります。
でも、考える前に笑わせてくれるというか。
笑いたくて、次は次はってなった本は久しぶりでした。
主人公の琴子(8歳)こと、こっこはなんせ口が悪いんです。
琴子のセリフ
「うるさいぼけ」
「センス鼻糞、ほどもない!」
「凡人が!」
などなど、声に出して突っ込むときも、心の中で突っ込むときも、とにかく口が悪い。
それが、思わず笑ってしまうところであり、子供のかわいらしさであり、なんだか憎めないところです。
もし自分の子供がこういう口の利き方をしたら。
と思うとぞっとしますが、さすが関西なのかもしれない。
そして、同級生で吃音のぽっさんは、なんとも大人です。
ぽっさん
「こ、ことこ。の、ノボセイ行ってな、い、いきって、派手な靴下とか、や、やかましいゴムとか、に、手出すのんは、や、やめとけよ。お、大人になってな、し、写真み、見たらな、絶対に、ここ、後悔するから。」
「こ、個性ゆうもんは、も、目的にしたら、あかんのや」
ノボセイとは、こっことぽっさんが行く予定の、自由な校風の中学校のこと。
確実に周りを見えている、分かり切っている、深いことをいう小学生です。
ハッとしました。心に刺さったというか、思い出して笑ってしまいました。
なんせ、後悔したことがあるから!
小学生の頃にわかっていたら、同級生に言われていたら、きっとあんな髪型にはしなかったのに・・・。
とか。
おじいさんも素敵な事を言います。
おじいさん
「寿司 SUSHI」と、あった。寿司は英語でも「スシ」なのだ。例文は「人々はすしづめになった。」PEOPLE WERE PACKED IN LIKE SARDINES.スシはどこにもない。欧米人の気まぐれめ。
祖父の石太は文字が好きで、大量の書籍を買ってくるという、言葉を大事にしている人なんですが、こっこが夜遅くにぽっさんに会ってくるといったときは、日常英会話辞書を携え付き添います。
こっことぽっさんの会話を聞きながら、辞書を引くところです。
もう、全然関係ないんです。なのにこの突っ込み!
それを書いてしまう西さん。意味はないけど、笑いは深いです!
石太は「格好いい COOL」という言葉を探し当て、じっと琴子とぽっさんの話を聞いている。相変わらず月は白く、ソークールである。
なんともいえない心地いいリズムで、気持ちよくなるほど。
そう大したことは書いていないのに、「ソークール」を言いたくなってしまいます。
きっとこれを見ても、何の物語なのかわからないと思うんですが、話としては、こっこの心の成長です。
こっこは、8歳にして孤独を愛し孤独になりたいと思い、怪我や病気を格好いいと言う。少し変わった小学生なんです。
それは、本当に孤独になったことがないから、寂しくなったことがないからだと指摘され、自分でもそれが分からない。
そういった心の成長の物語だと私は思っています。
以前も小学生が主人公の本を紹介したことがありましたが、本当に子供のころそう思っていたのか、忘れているのか、子供から教わることの多さにいつも驚かされます。
そして、実は登場人物の多い本です。
この他にも、祖母、両親、学校の先生、同級生など、それぞれのキャラクターがハッキリしていて、そのキャラクターも面白い。
多いのに、ごちゃごちゃしないし、読みやすい。
これが西ワールドなのか。と。
別の本もどんどん読みたくなります。
・ぐっとくる『西加奈子~白いしるし~』
・西加奈子さんの短編集【炎上する君】は独特でぐっときた
・西加奈子【ふる】はけっこう深いくて、色々と考え込んでしまいました