心にぐっとくる本

ぐっとくる『西加奈子~白いしるし~』

こころにぐっとくる本

立て続けて読みまくってます。西加奈子さん。

全部は読んでいませんが、私が読んだ中で初めての恋愛ものです。

やっぱり良いです。

説明できない西加奈子さん

何が良いのか。

物語としてももちろん面白いのです。

もう少し詳細だったらいいな。と思う部分もあります。

詳細がわかるようなそうじゃない作品もありますが、この「白いしるし」は、細かくはないです。

言葉使いも、関西弁や突拍子もない言葉使いで笑ってしまいますが、けっして「きれいな言葉」という感じではありません。

言葉の羅列なのか、点の打ち方なのか、探しながら読んでも分かりません。

が、心にぐっと入ってきます。あるときふと、芯をついてきます。

新たに考えさせられることもありますが、どちらかというと自分の持っている感情や感覚を思い出させることが多いです。

思い出した瞬間その感情や感覚が溢れてきて、物語のような体験はしていないのにリンクしてしまいます。

それがどういうテクニックでなっているものなのかはまだ分かりません。

 

この「白いしるし」は恋愛ものですが、主人公が絵描きなんですね。

自分とは全くほど遠い人物なのに、何だか共感する部分がすごく大きいです。

そういう、万人が思ったことがあるであろう共通のことを拾うのがうまいんだな~とも思います。

白いしるし

友人が「地獄」に介入したのは、それぞれの理由がある、と言った。でも、それはきっと、後から、はじめて分かるものなのだ。
軽い気持ちだった、知らなかった、奪えると思った。
そんな理由は、後々分かることで、でも、始めは、きっと純粋に、「会いたい」、そう思っただけなのだ。そのときの、わたしのように。

これは、相手がいる人との恋愛についてですが、相手がいなくてもきっと、始めはただ純粋に会いたいだし、私は勝手に自分の旅にも置き換えてしまいました。

純粋に「行きたい」。行った先の国の事情や光景は、行ったものにしかわからない、後々わかるものだと。

多分、この時旅行に行きたくて仕方なかったのかな。

違った環境だけど、同じ感覚になることがあると思えるのも西さんならではのものではないでしょうか。

 

絵画は自分の感情や伝えたいことを補塡するものではなくて、そもそも、何かを伝えるようなものでもないと、思っていた。絵画は、絵画だ。絵を描きたい。その素朴な欲求、行為、それだけを私は信じたい。それを見て分かってもらいたいことはないのだ。一方的な感情かもしれないが、表現の始まりが一方的なのは、当然だと思う。

これもそうで、この部分を読んだとき絵なんて得意ではない私は、子供の頃を思い出しました。

絵だけではなくて、ただただ書きたいと思った言葉や、ただただ弾きたいと思った楽器のことを思い出しました。

やみくもに弾いたピアノの下手さを。

そして、それが当然だったということを、思い知らされました。

あまりにも昔のことで、完全に忘れていた思いを的確に引き出してくれます。

 

GPSは歴史的な発明だ。どこにだって連れて行ってくれる。信じすぎると痛い目を見る、と誰かが言ったが、少々の痛い目なら大丈夫だ。私は強い。

「そうだ、私は強かったんだ」

始めに思ったのはこれです。ずいぶん昔じゃなくても、日常でちょっとした思いって結構忘れがちなんだな。

と再確認です。

自分のことを弱いとは思っていませんが、そうだったそうだったって感じです。

それであって、勇気づけられる文です。

強いとか弱いとかではなく、GPSが変な方向を指してしまうことくらい、日常での少々の痛い目は大したことないという気持ちにさせてくれます。

まだまだ、読めてない西さんの本もありますが、また、色んな思いを思い出したいな。という、感覚です。

やっぱり良いです。

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