心にぐっとくる本

深澤真紀『思わず使ってしまうおバカな日本語』の突っ込みどころが良い

こころにぐっとくる本

これは、私の好きな文章や言葉の傾向なんですが、物語にしても、映画にしても、何にしても、著者や主人公が、何かについて突っ込む。ということです。

深澤真紀さんの「おバカな日本語」もかなり突っ込みが面白いです。

冷静さとまともさがあって、ハッとさせられます。

本の表紙はまじめな感じなんですが、めちゃくちゃおもしろい。

思わず使ってしまうおバカな日本語

本の内容は、それぞれ○○語と分かれて紹介されています。

・自分大好き語
・幼稚丁寧語
・実感後
・過剰美化語
・代理店語
・家族大好き語
・ポジティブ・エンジョイ語
・ありがとう&リスペクト語

これを見ても、何のことやらわからないんですが、読んでいくと「あ、使ってたわ」とか「そこそんな風にツッコむか」とおもしろい。

今まで、自分が使ってきた言葉に対しても見直してしまいます。

 

まずは、この本にある「幼児丁寧語」というところです。

幼児丁寧語とは、

「大根が煮えてます」⇒「大根が煮えてくれます」
「犬にエサをやる」⇒「犬にごはんをあげる」
「花が咲く」⇒「花が咲いてくれる」
「右手を挙げてください」⇒「右手を挙げてあげてください」

というように、自分が受け身の状態でものがある。と書いてあります。

そんな中、深澤さんが飼っている猫に対して、ペットシッターの方から届くメールです。

「×月×日×時、ご訪問いたしました。猫さんはニャーとご挨拶してお出迎えしてくださいました。」
「猫さんはオネムの状態でいらっしゃいましたが、ごはんをご用意したら起きてくださいました」
・・・うちの猫は「お姫様かっ!」

突っ込みもきれいで素晴らしいですが、突っ込まないでいられないメールも中々です。

最近はペット重視になっている方も多いので、ペットシッターとしては言わざるを得ないのかもしれませんが、そこまでやるか!?というような言葉使いを笑ってしまいます。

「ペット」というと怒る飼い主もいるでしょう。

もしかして、家族同様にかわいがっている方からしたら当たり前になっていることかもしれませんが、突っ込み側は冷静です。

過剰美化語

「過剰美化語」という題のところです。

美化語というのは、何かに「お」などを付けて美化することらしいんですが、あるアイドルがブログで

「これからぼく、メンバーのお誕生日のプレゼントのお買い物に行ってきま~す!その後はお仕事で~す!」

と書いていたのを見て、深澤さんは

「これは、そういうギャグなのだろうか?」と最初は思っていたものですが、他の男性タレントも同じような言葉使いをしており、ギャグじゃないんだと気づいたわけです。

と言っています。

これは、「突っ込み」ということではないですが、それをギャグ?と思ってしまうところがすでに突っ込みの用意が出来ていると感じてしまいます。

確かに、普通の文章で当たり前に流してしまいがちです。

かわいい感じの男の子なら使っているように思いますが、昭和生まれからしたらギャグにきこえます。

そこをうまいこと書いてあるなぁと思ってしまいます。

代理店語

「代理店語」というところでも「さん」について書いてあります。

代理店用語として用いる「〇〇社さん」を使うことに対してですが、大学のコンサルトをしている会社が発したところです。

「弊社は多くの大学さんとお仕事させていただいてます」
「東京大学さん」や「早稲田大学さん」という固有名詞ならまだわかるのですが、「大学さん」とは・・・!詩人の堀口大學さんのことを言っているのかと、一瞬思ったほどです。

これも、ザ・突っ込みというわけではないですが、堀口大學を思い出す時点で心の中では突っ込んでますよね。

周りが、何の話をしているか分からないときなどに、ある言葉だけを拾ってこのことを話しているんだな。と勘繰ることがありますが、実際全然違ったりすることがあります。

堀口大學を思い出す時点で「そこ出てくる」と笑ってしまいます。

でも、言っちゃうな~。

○○社さん。仕事いてるとさんの連用してますもんね。

失礼のないように使ってるけど、周りからしたら「誰のこと話してるの」となってるのかも。

そう思うと、これから「さん」が出てきたら思い出して笑ってしまうな。

ポジティブ・エンジョイ語

「ポジティブエンジョイ語」というところでも、軽く突っ込んでいて笑ってしまいました。

確かに最近では、「苦労」や「努力」というよりも、「楽しむ」ということの方が美化しされていると思います。

スポ根って見かけなくなりましたもんね。

そして、「いい経験でした」というポジティブな考えについてです。

ある企業家のインタビューで、

「東大に落ちたのは結果として良かった」

という文に対して、

東大に行っていたら、それはそれでいいことがあったでしょう。

という突っ込み。的確すぎて笑ってしまいます。

「〇〇社に落ちたことで今の僕がある」

という場面では

「いまの僕」があるのはそうかもしれませんが、「別の僕」もあったかもしれないわけで、今の僕を全肯定しなくてもいいのではと思うのです。

たまらないです。この突っ込み。

まともですよね。

むしろ私は突っ込まれる側の考えで、自分の失敗や自分がしてきたことを肯定しようとしてきた側です。

こうもまともに突っ込まれると、なんんだか恥ずかしささえおぼえてしまいます。

ありがとう&リスペクト語

「ありがとう&リスペクト語」で「何か面白いこと一緒にやろうよ」という題があるのですが、そこにはこう書いてあります。

これはとくに、ベンチャービジネスの社長のブログやメルマガなどでよく見られます。
「みんながつながっていけば、この会社も変わるよ!」
「笑顔が大事。いい笑顔をもらったら『笑顔ありがとう!』とメモを渡そう」
「みんなでこの日本を変えていこうよ!」
など、小学生の朝礼のような言葉の数々が躍り、それに対して若者たちが、
「本当ですね!さすが〇〇さん、感動しました!」
とコメントを返すのです。
私はこれらのベンチャー社長と取材などで会うこともよくありますが、彼らは、「なんかビジネスしようよ」とよく持ちかけてきます。
「俺らでビジネスやったら面白いことができると思うんだ」
と言うのですが、そんなことは面倒くさいので、「私はそう思わないのですけど」と返すと、本当にびっくりされます。

最高です。もう、自我しかありません。

有益なんてお構いなしですし、かなり冷静です。

若干突っ込みに冷たさを感じるものの、夢から覚めるような言い方です。

「みんなで頑張ろうよ!」みたいなのはないけで、すぐに熱くなるタイプなので、冷静さがうらやましい。

突っ込みがうまい人は必ず自分がありますし、躍らない、躍らせられない人が多い気がします。

私は冷静になって自分をコントロールしているつもりが、あるときついつい躍ってしまう自分がいるし、躍らせられてしまいす。

その時は自分を高めていると思っていますが、この本のように言われると、ハッとしてしまうし、少し恥ずかしくなります。

で、冷静になってまともなことをやろうとすると結構難しいです。

だからこそ、面白いと思うのかもしれませんが、言葉にかかわらず自分を見直せる本です。