心にぐっとくる本

ぐっとくる『奥田英朗~ウランバーナの森~』

こころにぐっとくる本

奥田英朗さんの作品も好きで「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」の次に読んだのが「ウランバーナの森」でした。

何ていうんでしょう。「この先どうなるの!?」っていうのが上手いんです。

ハラハラ感。ドキドキ感。

あと、読みやすいし、やっぱり面白い!

面白い中で、心に刺さるような文章を書かれたりすると、更にのめり込んでしまいます。

「ウランバーナの森」

主人公が妻と子供と軽井沢での生活を送っている物語です。

そういうとのんびりとしていて優雅な生活を描いているような感じもしますが、そういうのとはちょっと違います。

主人公が病院へ通う話です。

主人公の子供時代のことについて書かれているところ

間抜けな善人より話術巧みな悪漢を好むのは、子供の世界では自然のことだった。

ちょっとわかります。

子供の頃って、洗脳されますよね。

子供時代だけじゃないですが・・・。

よ~く考えたら、話術巧みな人に善人っていないかもな。いや、いるか。

ん?

そして、その後ガールフレンドの家で人のいい母親とそのガールフレンドのやり取りを見て思うこと

緊張しないでいられる親子関係というのは、ジョンにはうらやましいというより、自分とは無縁の世界がそんざいしていることを見せつけられている気がした。簡単に信じるわけにはいかないが、世界はきっと楽しいところだろうと思った。

この部分を読むだけで、主人公の子供時代の親子関係が見えてきます。

実は私も子供の頃、父親に緊張してました。

「怖かったから」というのもあったんですが、1年に数ヶ月しか家にいない父親で、帰ってくるたびに緊張してました。

友達の家に遊びに行って、友達のお父さんとかがワイワイしてるのを見ると羨まかったですねえ。

だからこそ、この部分を読んだとき、「ああ、そうか。あの頃、他の世界はきっともっと楽しかったんだ。」

と少しおセンチな気分になり、それに浸ってしまいました。

主人公が通う病院のドクターのセリフ

人間にしろ、動物にしろ、生きていくうえでしなければならないことなど実は一つもないのです。
読まなければならない本もなければ、会わなければならない人もいない。
食べなければならない物もなければ、行かなければならない学校もない。
権利はある。しかし義務はない。してはいけないことがいくつか存在するだけで、しなければならないことは何もないのです。あなたは<かくあるべし>という気持ちが強すぎる。

ハッとさせられました。

真面目なんで(本当ですよ・・・。)こうあるべき。とまでは思いませんが、やらなきゃとか、行かなきゃとか。すごく強く思ってしまいます。

あと、体を壊すから食べなきゃ!ってドンドン太っていきます。

色んな「しなければ」が過剰になって、自分を苦しめることってありますよね。

楽になる一節です。

一番好きなところ

人は何を隠して生きているのだろう。みせかけの笑顔の奥に、何を封じ込めて毎日を送っているのだろう。のぞかれたくない胸の内。見ないふりしている真実。「しあわせ?」と聞かれれば嘘でも「しあわせ」と人は答える。それはまるで、そうありたいための自己暗示のようなものだ。
けれどそれのどこが悪いというのか。うぬぼれと思い込みがなければ、人生はつらいことばかりじゃないか。

接客をしていたころ。この文章をよんでから「自分もそうだしこの人はどうなんだろう?」ってよく考えてました。

みせかけの笑顔同志。どこまで本音を引き出せるか。

でも、それは見られたくない部分なのか。見ないふりをした方がいいのか。

そんな事考えて、疲れましたが。

考えても、真実はどこにもありませんね。

 

実にすがすがしい本です。

最後は少し笑顔になって「パタン」と本を閉じる感じです。

最後がわかっていても読み返しちゃうなぁ。

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