心にぐっとくる漫画

いくえみ綾【ケチャップ マヨネーズ】美味しそうだが幽霊のホームドラマ

心にぐっとくる漫画1

ケチャップマヨネーズは3つの短編からなる1冊です。

【ケチャップ マヨネーズ】
【水の春】
【アイスクリーム チョコレート】

なんだかおいしそうなタイトルである。

マヨラー
ケチャラー
アイスクリーマー
チョコレーター

???

後半の2つは違いますね。作る機械の方だな。なんでもerつければいいってもんではなかった(;´∀`)

おいしそうではありますが、ちょっと心が痛くなる3作品です。

※注意:ネタバレあります。

【ケチャップ マヨネーズ】のあらすじ

スナックで働く母(春江)が再婚し、新しい父親(秀雄)とその子供たち2人。5人の家族として新しい父親の家に吸収合併され暮らし始める温志。

新・妹(クララ)「ママーっ おやつちょうだ~いっ
殴る新・弟。
新・弟(ぺーたー)「クララがママなんてゆうからだっ」「このひとはママじゃないっ」「おかあさん!!

優しい父親に害のない弟妹。ほのぼのと始まる物語ですが、新しい父親の死んだ妻、ひよ子の霊が温志にだけ見えてしまう。誰も気づいてくれないことにさみしさを感じ、幸せそうな春江に嫉妬する幽霊のひよ子。

5人の家族はドライブに高原へ。ひよ子も一緒についてくる。

40すぎて
19の嫁に・・・産ませた子供で
恥ずかしながら
自分だけが老いていくようでね
こんな大きな息子ができて嬉しい・・・
3年後にいっしょに酒を飲もう

フフ( *´艸`)。なんだか優しい父親じゃないか・・・。

って、20以上年齢が離れていた元嫁!しかも猛烈に少女趣味な!!スナックで働いていた今嫁!!!

薄っすら髪の毛が上がってきている新しい父親はファンキーだな。

温志は新しい弟妹に「ほんとの母ちゃんに会いたくないか?」と聞くが・・・。

 

家族は温かく明るく前向きで、幽霊のひよ子はそんな家族を見てさみしがる。間に挟まれてしまっている温志。

短編ではありますが、それぞれの思いが伝わってくる。本当は1日もひよ子のことを忘れてはいない新・父。花を変え仏壇に手を合わせる母。ママの事を話すのはお母さんに悪いと思っていた新・弟妹。

そこがまた少し胸が痛くなります。

温かいようで切なく、切ないようでやはり温かい。

【ケチャップマヨネーズ】と言う題名ですが、チキンライスにチキンが入っていないただの「ケチャップごはん」と、白飯にマヨネーズをかけて食べる温志。

いや、マヨネーズはそこだけかい!?

ってなタイトル名です。

【ケチャップマヨネーズ】主な登場人物

温志(あつし)「あれ」が見える主人公。17歳
餅太(ぺーたー)新しくできた弟。5歳
クララ新しくできた妹。3歳
春江(はるえ)スナックで働いていた温志の母。39歳
神谷秀雄(かみたにひでお)新しくできた父。47歳
ひよ子心臓病で亡くなった元妻

ひよ子は少女趣味でお城のように部屋も飾っている。それにしてもペーターとクララって・・・。

いくえみ先生。話も好きだけど、キャラクターの名前の付け方のセンスがめちゃくちゃ好きです。今回はやられたね。

ペーターとクララって・・・。しかも餅に太って・・・。

センスが良いにもほどがあるわ!!

【水の春】のあらすじ

高3の夏に電車で手塚に一目ぼれをした真紀。告白して付き合うことになる。後にお互いの友人も付き合うことになる。

・真紀×手塚
・文香×犬崎

物語は高3の冬。

真紀と文香は地元の大学へ進路が決まっている。犬崎は静岡へ就職。文香と犬崎は進路のことで言い合いが絶えない。「もう会えないねさようなら」とドライな文香。

りっぱなケーキ職人になって
キミに甘い約束を届けるよ

頬を少し染めて言う犬崎のこのセリフに、なぜかキュンとしてしまった私。

そう。誰かに言われたいだけなのです。

言われたら言われたで引くとは思いますが・・・。

なぜか手塚と文香は2人で会っている。真紀は犬崎の思い出をたどる。

でも もしかして
ちがう道があれば
ちがう結果がみれたはず
なんて言っても
あの時のあたしたちには気づけないの
だって可能性なんて
無限のようで
わからない

高校生の恋愛の終結はあっけない。

いや、高校生じゃなくてもあっけないのかもしれない。

泣いたりケンカしたりもありますが、それにしても4人はけっこうドライで切り替えが早いように見えます。

若いからか?未来があるからか?

いや、大人になっても可能性は無限だし、分からないんだ!!

・・・と言い聞かせる。

【水の春】主な登場人物

堀田真紀(ほったまき)手塚に一目ぼれして告った主人公
手塚(てづか)駅で告られた男子高校生
文香(ふみか)真紀の同級生で犬崎とくつく女の子
犬崎(いぬざき)手塚の同級生で文香とくっつく男の子

 

【アイスクリーム チョコレート】のあらすじ

13~4年もの間にーや君に思いを寄せているさくらは、ある朝神様に

「今日から好きな顔を選んでよし!」

と言われます。

そしてさくらは、にーや君の好きなそーまさんの顔になることにします。

そーまさんの顔になったさくらですが、みんなは「さくら」と認識していて、そーまさんはこの世からも人の記憶からも消えてしまいます。

ある時サークルの飲み会で周りから「恋人同士じゃないんですかぁ?」と言われるにーまくんとさくら。

やったー
意識してる
絶対してる
やっぱり これは「恋」よね!?
この顔になってよかった
変身してよかった

と思うさくら。

後輩の茅野くんは、酔っ払ったさくらに事情を聞いていて「彼女は整形ですか?」とにーまくんに問いますが、「んなことして僕が気づかないわけないし」とそーまくん。

さくらが自分のことを好きなのは分かっていて、「告白させてない」と言うにーまくん。

それを知った茅野くん。

言わせてあげればよかったのに
せめて聞くだけでも
でないと
彼女の14年間は
どこへ行けばいいんでしょう

この物語は、ファンタジーでもファンシーでもありません。

そーまさんはちゃんと存在してたし、さくらの顔は変わってはいません。

知らない間に大量のお菓子を食べていたさくら。ファミリー用の大きなアイスクリーム。妹のケーキ。

片思いで心を患った過食症気味の女の子のお話です。

 

行く恵美先生の漫画で過食と言うと「カズン」を思い出しますが、たまに出てきます。過食。

私の中で過食で思い出すのはも一つ。岡崎京子の「リバーズエッジ」。まぁ、でも、あそこまでグロくないし、こっちの方が心情的にリアルな感じがちょっと泣けます。

ときに、空想や妄想は危ない。

【アイスクリーム チョコレート】の主な登場人物

小城さくら(こしろさくら)恋を煩う主人公
新屋(にいや)にーやくん。
茅野(かやの)後輩
相馬志保子(そうましほこ)そーまさん

茅野くんは、【ハニバニ】の2巻に収録されている短編「ラブレター」にも出てきます。

冷静で周りのことをよく見ててちゃんとしてて、ポーカーフェイスで冷たそうに見えるけどフレンドリーで。

私は茅野くんのようになりたいと、昔読んで思ったことがあります。

 

※【ケチャップマヨネーズ】と【アイスクリームチョコレート】は『いくえみ綾 THE BEST 2』に収録されています。