心にぐっとくる漫画

いくえみ綾【私がいてもいなくても】不安とか淋しさとか自分の存在価値とか

心にぐっとくる漫画1

「私がいてもいなくても」。

口コミを見ているとけっこう色々で、「終わりがスッキリしない」とか「分かりにくい」という感想と、「リアルな感じでよかった」「共感できて泣けた」という感想に大きく分かれ作品なのかもしれません。

私はいくえみ先生の作品が好きなのですが、やっぱり「共感できる」と言う点で「私がいてもいなくても」が好きです。

うん。かなり好きな作品です。

というか、刺さりまくりでした!!

やりたいことが見つからない
必要とされたい
本当が欲しい
取り残されてる気がする
友だちの言動に釈然としない
自分が分からない
私は何ができるんだろう

こういった気持ちになったことがある人には刺さるんじゃないかと思います。

※注意:ネタバレあります。

【私がいてもいなくても】のざっとしたあらすじ

高校を卒業してフリーターの晶子はある日街で同級生で漫画家の真希に出会い、バイトとして真希のところで働きだす。
才能のある真希を目の前に、自分には何もないと気づかされる晶子。
兄のことしか見てない母親、何を考えているのか家を出る兄、浮気性の彼。そんな中で気になるのは真希の彼氏でアシスタントの仕事を手伝っているはじめだった。

まぁ、友達が漫画家になってっていう設定はリアルではないですが、働くという事や人間関係や自分の心境や、そう言ったものが詰め込まれている作品だと思います。

不安やさみしさ、自分の存在意義・存在価値とは。

大きな展開があるわけじゃないんですが、日常生活の中で思ってても口にしないような気持ちとか、実はそれが本音だったり。そういう自分にイライラしたり。

そんな話。

【私がいてもいなくても】主な登場人物

安倍晶子(あべしょうこ)漫画家の真希を手伝うもうすぐ19歳
神田川真希(かんだがわまき)晶子の中学時代の同級生。漫画家。19歳
日山一(ひやまはじめ)ひーさん。真希の彼。真希の漫画を手伝っている売れない漫画家。25歳
菅野剛史(かんのたけし)浮気癖のある付き合って2カ月の晶子の彼。古着屋の店員。20歳
袖野美穂(そでのみほ)大学に通いながらホステスをしている晶子の友達
安倍拓也(あべたくや)晶子の兄
拓也と晶子の母
細野カレン(ほそのかれん)真希の新しいアシスタント

晶子は主人公で、真希、まじめ、たけしはメインとして登場しますが、母や兄、カレンなどもキーパーソンだったりします。

【私がいてもいなくても】1巻

ある日街で中学時代の同級生の真希に出逢う晶子。晶子には付き合い始めて2カ月になる彼氏の剛史がいるが、剛史の部屋で長い髪の毛を見つける晶子。しかし晶子は何も言わない。

母親との関係も微妙で、一人暮らしをしたいと思っているが働きたくもない晶子。そんな晶子に友達の美穂は言う。

人間働かないと
勤勉 労働
たまに遊んで潤いを

晶子は美穂のことをかっこいいと思っていますが、美穂はかっこいいのです。大学に行きながらホステスをしているんです。

物語の中で自分の気持ちの中だったり、その人のことを他の人に悪く言う人もいるのですが、悪いことを言わずサバサバしているが美穂。

いくえみ先生のドロドロした話にはサバサバした女性が描かれていることがありますが、そういう女性を格好いいと思いながら私は読んでしまいます。「私がいてもいなくても」では美穂なんです。

 

晶子は真希のところで働きだすが、そこで一緒に働いているのが売れない漫画家で真希の彼氏でもあるはじめ。はじめは髪もボサボサで無精ひげ。

晶子がご飯を作っても

仕事中のごはんなんて「エサ」だから何食べても同じだしネ!

という真希。

それにに対し、そこまで気にしていない様子の晶子ですが、

だからせっかくのごはんを「エサ」だとか言うんだ

と、はじめ。

晶子は家でも母親にグチグチ言われ、兄と比べられてしまう。

そんな中、浮気していた剛史に「一緒に住もーぜっ」と言われ剛史の家へ。しかし、隣に住んでいたのは真希の彼氏のはじめでした。

ある日真希に「お茶でもしない?」と呼び出され、バイト代のことや就職のことを話すのですが、「自分にはやりたい事はない」と言った晶子に

えー
つまんない人生だねー

という真希。

そう、真希はズケズケとものをいうタイプなのです。

呼び出された理由も、実は家を片付けたかったから。

そんな真希にモヤモヤしだす晶子ですが、付き合っている剛史ともケンカしてしまう。美穂の家に来て美穂が言ったセリフ。

「しょーがない」言ってたら
一生なんにもできないよ

仕事も男も親も
み~んな
不満だらけでどーすんのよ

やっぱり美穂はかっこいい。

でも、自分ではどうにもできないこともあると晶子。それは母親のこと。

ただ必要とされたい晶子は、大勢の人から支持されている真希を羨ましく思う。

浮気した剛史。剛史は自分を好きでいてくれたんだと思うけど自分じゃなくても良かったと思い、自分も同じで、剛史じゃなくて一緒に入れるなら誰でも良かったのかも。と思う晶子。

こんはのちがう
こんなのはほんとじゃない

ほんとうがほしい
何か ひとつの ほんとうがほしい

と思う晶子。

真希の漫画が有名になって雑誌に載って、

なんだろう
なんだか いつも ひとり
取り残されてる気がして

と少し情緒不安定になる晶子。

私は一人でも平気なタイプですが(多分)、晶子は「淋しい」と思うタイプのようで、育ってきた環境で違うのかなって思いました。

もしかしたら自分は親に愛されてないんじゃないかって思ったら、淋しくて誰でも良いからって求めたかもしれない。

自分は平凡で才能もなくて、それは普通のことですが、才能がある人が間近にいたら、って思ったら、淋しくて情緒不安定になるかもしれない。

そんで、そんな中で優しい言葉をかけてくれる人がいたら、その人に恋をすると思う。

母親のことや兄のことや彼氏のことや自分のことで、心がくちゃぐちゃで情緒不安定な晶子に

それぁ変だねぇ
眠っている人間の
気を使う
優しさがあんのにねぇ

とはじめ。

自分のことを見てくれていて、分かってくれて。って人を、好きになるでしょう?

ちょっとずつ近づく晶子と一の距離。

真希は真希で真希の気持ち。

晶子:あたしのこと嫌いなら・・・なんで仕事によぶんだろ?

はじめ:嫌いじゃないよ 多分 あいつ 友達いないから 自分を認めてくれる友人が欲しくて必死なんだろう きっと

晶子:「鈍感」でぜんぶが許されるの?あたしは真希の良さが分かんないな あの漫画もわかんないし どこがよくて真希とつきあってんのかぜんぜんわかんない

はじめ:真希は 人を羨む前に 自分のできることはやるからね

自分には何ができるだろうと悩む晶子。

そんな晶子に真希は

なんで?ダメじゃないじゃん
あたしはまんが以外 何もできないけど
晶子はごはんだってつくれるし
仕事覚えるの早いし トーンはりもすっごく うまくなったよ?

と言う。

本音じゃなくて裏があること。本音であって裏がないこと。

裏があっても全部が裏じゃなくて、話してみないと分からないことってあって、そういうのを描くのがやっぱりうまいいくえみ先生。

【私がいてもいなくても】2巻

アルバイトから社員になった晶子。はじめが忙しくなって新しいアシスタントを雇う真希。

新しいアシスタントのカレンは、はじめのファンだと言い、憧れの先生と一緒に働けて幸せだと言います。

これ・・・
つまんない映画でしたよね

カレンは表ではいい顔をして裏では陰口を言うような、少し人を馬鹿にしてるような、ちょっと嫌な感じのキャラなんですが、なんかいるよなぁ~ってところも共感しちゃいます。

家を出た兄を駅で見かけその駅で探す晶子。父親は家のことに無関心で、兄が家を出たことで「お兄ちゃん命」の母親が精神的に不安定で、そんなことをはじめに話す晶子。

「お母さんが心配なんだ」「負けずに甘えればいーのに」とはじめ。

優しくして
言いたいこと言ってやれるだけのこと全部やって
それでも何も伝わらないんだったら
切れば いい

捨てるの
自分に必要ないものは要らないでしょ

優しいようで冷たいはじめ。

剛史にも「いい人そうで違うよな?」「なんか・・・血ィかよってねえもてーだ」と言われてしまう。

真希は真希でネットに書かれた誹謗中傷がきっかけなのか、どんづまってしまう。

家を出た晶子。どんづまってる真希。冷たいはじめ。

【私がいてもいなくても】3巻

真希が描けなくなり仕事のない晶子はバイトを探す。そんな晶子の前に兄が現れ「彼女と別れた」という。

つーか出てきた
愛情の押し売りはうぜーよ

母親が心配してるから家に連絡をしろと言う晶子に「お前に何がわかんだよっ」と切れる兄。

兄は兄で母親の愛が嫌だったのかもしれない。押し売りだと思っていたのかもしれない。ゆがんだ愛情。ゆがんでるけどある愛情。

晶子はティッシュ配りのバイト中に喪服姿のはじめに会う。はじめは絶縁状態だった父親が死んだという。

それでも小さい頃はなんとか合わせよーと努力すんじゃん?
親や家は絶対だから
何をやっても裏目に出た
兄弟ん中で自分だけ
尻尾でも生えてんのかと思った

自分は いてもいなくてもよかったんだ

みんなちょっとずつ歪んでる。

学生の頃に読んでた時はちょっと泣きましたが、大人になったら「歪んでるのなんて普通よね」って思うようになってました。口に出さないけど何かしら思うことがあって、でも、みんなそうやって生きてんじゃん。って思うんです。

晶子の母親が入院して、母親にも連絡をくれた真希にもひどいことを言ってしまう晶子。

やさしい人になりたい
あたしが欲しくて与えられなかったようなものを
自分の愛する人たちに与えたい
そうすれば
きっとあたしは
一人じゃなくなるんだ

真希と言い合いになり、自分は知らない間に誰かに何かを与えていたかもしれないと気づく晶子。

それぞれが少しづつ自分の力で歩き出す。

 

題名通り、「自分はいてもいなくても」って思ったことはあります。

で、実際、いてもいなくても時間は流れるし、いてもいなくてもそれぞれの生活は続くんです。

結局「自分はいてもいなくても」って思ってた時は世界が狭かったな。とも思います。

今も「自分はいてもいなくても」って思いますが、昔のように悩まなくなったのは、そんなこと考えても意味がないって分かったから。気持ちが楽になったから。

晶子のように受け入れたからかもしれない。

 

【私がいてもいなくても】新書判(昔のやつね。少年・少女コミックに多いサイズ)は全3巻。文庫判(ハガキサイズ)は全2巻です。