心にぐっとくる本

カリール・ジブラン【子供について】悩んだ時に世みたい一冊

こころにぐっとくる本

自分から求めていないのに、ある時ふと目に入る言葉があります。

仕事で必要になるであろう知識を増やすために色々と本を読んでいた時、ある本の冒頭に書かれていた詩がなぜだか気になってしまいました。

詩なのか作者の言葉なのかが最初はよくわからなかったんですが、その言葉の作者が書いてあったので調べてみました。

それは、カリール・ジブランという人の「預言者」という本の中の一節だと分かりました。

カリール・ジブラン【子どもについて】

あなたの子は、あなたの子ではありません。
自らを保つこと、それが生命の願望。そこから生まれた息子や娘、それがあなたの子なのです。
あなたを通ってやって来ますが、あなたからではなくあなたと一緒にいますが、それでいてあなたのものではないのです。
子供に愛を注ぐがよい。でも考えは別です。
子供には子供の考えがあるのです。
あなたの家に子供の体を住まわせるがよい。でもその魂は別です。子供の魂は明日の家に住んでいて、あなたの夢の中にでも、そこには立ち入れないのです。
子供のようになろうと努めるがよい。でも、子供をあなたのようにしようとしてはいけません。
なぜなら、生命は後へは戻らず、昨日と一緒に留まってもいません。
あなたは弓です。
その弓から、子は生きた矢となって放たれて行きます。射手は無窮の道程(みちのり)にある的を見ながら、力強くあなたを引きしぼるのです。かれの矢が速く遠くに飛んで行くために。
あの射手に引きしぼられるとは、何と有難いことではありませんか。
なぜなら、射手が、飛んで行く矢を愛しているなら、留まっている弓をも愛しているのですから。

意味が分かるようで分からない。広い意味なんだろうとは思いましたが、どう解釈すれば良いのかというのが少し難しい。

それでも気になって仕方がない。

・「子供について」だから、子育てについてのことなんだろう。
・子供を厳しくするのとは別に、監視したり必要以上にかまってはいけないということなのかな?
・ちょっと前に流行った「毒親」のことか?
・「これは宗教的なもの?」

どう解釈して良いかが難しいからこそ、バァ~っと頭の中を色々な設定が駆け巡ったんです。

あと、本を読んで思うことって人それぞれだと思いますが、私はいつも仕事と結びつけてしまう癖があります。

「結局、仕事好きなんじゃん」って自分に問う自分もいる。

で、この「子供について」を読んだ時も、子供って新入社員とか後輩とかに言い換えたら一緒かもなぁ。とも思いました。

だから引っかかってたのかもしれません。

カリール・ジブラン【預言者】

この「子供について」は、カリール・ジブランの「預言者」という本の一節です。

カリール・ジブラーン、ハリール・ジブラン、ハリール・ジブラーンなどと読むこともあるようです。

1923年に「The Prophet」という英語で書かれた本で、日本でも様々な方に和訳されています。

1990年にはじめて和訳されたのが、佐久間彪氏によるものです。

はじめに読んだのがこちらでした。

少々難しい。というのも、解説などが少なく分からないことも多い。

他の和訳されたものも読みました。

はじめて読む人には、柳澤桂子さんによる「よく生きる智慧」という本のほうが分かりやすいかもしれません。

カリール・ジブランという人物について、また、その思想についても分かりやすくかかれています。

柳澤桂子さんによる「よく生きる智慧」の中に、

「預言者=神の言葉を預かるもの」。予言者ではなく預言者。

と書かれています。

あぁ、そうか。「預言者」という題名から勝手に未来を解くようなものなのかと思っていましたが、人の道を説くという事か。

そして、こうも書いてありました。

この本はかすかな宗教味は帯びていますが、キリスト教やイスラム教のように、一人の人格神を信じなさいというようなものではありません。もっと原初的なカタチで、驚くに絶えない雅量の深さで、私たち日本人の心にも語り掛けてきます。

なるほど。宗教的なもの?と思っていましたが、どんな人にとっても心の支えになるような本だという事なのでしょう。

「預言者」の内容

冒頭で書いたものは「子供について」ですが、その他に27章あります。

アルムスタファという神の言葉を人々に伝える者が、オルファレースという街を出て行こうとする所から始まります。

そして、街の人々に語り始めるのです。

はじめて読んだ時、アルムスタファという人物はイエスだと思っていましたが、カリール・ジブランその人がモデルではないかと言われているそうです。

物語としても読めますが、人々に向けた言葉がかかれているというのが内容。

・船の訪れ
・愛について
・結婚について
・子供について
・施しについて
・飲食について
・労働について
・喜びと悲しみについて
・家について
・着物について
・売買について
・罪と罰について
・法律について
・自由について
・理性と情熱について
・苦しみについて
・自らを知ることについて
・教えることについて
・友情について
・語ることについて
・時について
・善と悪について
・祈りについて
・快楽について
・美について
・宗教について
・死について
・別れ

これは佐久間彪氏によるものです。本によって訳が少し異なります。

分かりにくい章もありますが、心にスッと入ってくるものもある。

例えば「結婚について」

おたがいに愛し合いなさい。
けれども愛で動きが取れないようになってはいけない。
むしろ愛を海にしておいて、その潮があなた方の魂の岸辺のあいだを流れるようにしておきなさい。
~省略~
二人はいっしょに立ちなさい。
けれども近すぎるところに立ってはいけない。
というのも、神殿の柱は離れ離れに立っているし、樫の木や糸杉はおたがいの陰には育つことができないのだから。

「よく生きる智慧」より引用

例えば「友情について」

時間をむだにつぶすためだけに友を求めるなら、友にいったい何の意味があるのだろうか?
常に人生を充実させる時間を友に求めよ。
なぜなら友はあなたの求めを満たすためにいるので、あなたの空虚感を埋めるためにいるのではないのだから。

「よく生きる智慧」より引用

特に今、人間関係に悩んでいるわけではありませんが、いつも思っているのかもしれないなぁ。と思いました。

だからこういった言葉が心にスッと入ってきて目を止めてしまうんだろうなぁ。

最後の方の言葉で、岩男寿美子さんが訳された「生きる糧」という本に書かれていたのが分かりやすかったです。

これらの言葉が曖昧でも、はっきりさせようとしないでほしい。
すべての始まりは、曖昧ではっきりしないものだが、終わりはそうではない。

なるほど。

解釈が難しいと思いはっきりさせたい自分もいましたが、そうじゃなかったんだ。

もしかしたら何ヶ月後か何年後には、書かれている言葉がわたしの心の中にスッと入ってくるかもしれない。と思いました。

悩んだ時に世みたい一冊です。

いや、読んでいると悩まなくなるのかもしれない。