心にぐっとくる本

ぐっとくる『江国香織~落下する夕方~』

こころにぐっとくる本

こういう、ちょっと変わった恋愛もの。

好きだな。江国ワールド。

難しい本なんか読んでる途中で、同時進行で読んだりします。

癒しですね。私にとっての。

たまに温泉行く感覚です。

なんならずっと温泉に浸かっていたいのですが、、、。

落下する夕方

落下する夕方は1998年に、原田知世さん主演で、恋人役が渡部篤郎さんで映画になっています。

そんなに前!?

と驚きましたが、本は96年って書いてある。

絵本を読んでから映画を見た記憶がありますが、印象に残ってない。

江国さんの場合は言葉にはまっていくので、どちらかというと本の方が心に入ってきます。

やっぱりきれいな言葉。

同僚から恋人に花を買うのでつきあって欲しいと言われて

私はつきあってあげることにした。困っている同僚のためではなく、
臆面もなく少女趣味なその女友達のためにでもなく、
かつてそんな風に馬鹿馬鹿しく幸福だった私たちのために。
馬鹿馬鹿しく幸福だった、私と健吾と、そして恋人という残酷な錯覚のために

物語の冒頭で、一緒に住んでいた恋人に出ていくと言われています。

そのことを踏まえてのセリフです。

もう、毒に見えて毒ではない感じ。

もしかしたら、本当に毒づいているのかもしれない。

そんな感じがたまらないです。

馬鹿馬鹿しく幸福、、、。

いや、むしろ幸福とは馬鹿なものなのかもしれませんね。

「きのうみたいなこと、不愉快だろ?」と言われ

滑稽な質問だと、思った。不愉快などという感情は、もうとっくに忘れてしまった。
それを感じるべき機能は壊れたままなのだ。

ああ、そうか。そういう風に書けるんだ。

と思った一節です。

感情の事じゃない様に書きますよね。なのにすっと入ってくる。

それを滑稽だと言ってしまうところとかが、この本の主人公らしさが出てて良いんですよ。

サマースクールで

最後の夜、花火大会のあと、宿舎にひきあげながら同僚のスティーブが、件の彼女と来年結婚することにしたと打ちあけてくれた。
嬉しそうな、それでいてその嬉しさをかみ殺すような声で、ぬきさしならなくなっちゃって、などと言う。
「おめでとう」
まったくほがらかに私は言った。野の花が功を奏したのかもしれない。
「今度お祝いしなくちゃね」
さっきまでの花火のせいで、空気がまだかすかに煙っている。たくさんの虫の声。
そんなふうに、世の中はちゃんと動いているのだ。
私の人生の外側で。

説明するのにながく引用してしまいました。

主人公は、普通に生活してるんです。スクールの引率や、花火や、会話や。

そういう情景書かれていて、そういう風に見えない。

ちゃんと毎日を送っているのに、このくだりを読むと「止まってたんだ」とわかります。

ちょっとおセンチな自分が出てくるとき、こんな感覚になるなぁって。

新宿の南口の橋の上で、夕日を見ながら。

まあ、そんな時は、私は自分に酔っている時です。

 

本の中にパイ屋が出てくるんです。

気分によってなのか、にぎやかだったり、能天気だったり。というような表現をしています。

パイやを能天気と言ってみたり、毒ずくような場面があったり、かわいらしいところもあったり。

黒柳徹子さんみたい。

 

あと、鼻歌をよく歌うんです。主人公が。

これがまた、知ってる人は知ってるかもしれないというような、アルバムに入ってる一曲だったり、youtubeで検索しても出てこないんですよ。

それは、江国さんが好きな歌手や歌なのかしら?

そういうところも、楽しみながら読める本です。

落下する夕方は、淡々としているので最後までどうなるか想像がつきません。

最後まで読むと、なんとなく心をかき乱されたような気持になります。淡々としていた感情が荒ぶるというか。

主人公の感情がこちらに伝わる作品です。

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