心にぐっとくる漫画

いくえみ綾【プレゼント】ちっこい世界だけどあたしらのほとんどすべて

【プレゼント】は3つのお話が入っている短編集です。

・プレゼント
・おうじさまのゆくえ
・あなたにききたい

【プレゼント】は、いくえみ先生の中で「さっぱりほっこり系」か「ドロドロ刺さる系」か、どちらかと言うと後者。なんだと思いますが、短編なのでそこまでドロドロ感もなく、それでいて学生時代や人との関わりの間にある心情的なものがちりばめられていると思います。

私は好きなで(というか、好きじゃない作品はほとんどないんですが)、自分を強く持とうと思う作品です。

※注意:ネタバレあります。

【プレゼント】あらすじ

・「13の青い春」編
・「18の分岐点」
・「21の………」

と、大きく3つに分かれていて、主人公の川田亜希の成長の物語です。

「13の青い春」編

中学2年のクラス替えで仲の良かった友達と離れてしまった亜希。

でも あの子らとも
さいきん いまいちだったから
ちょうど よかったかも

そんなシーンで始めります。

普通、仲の良かった友達とクラスが離れてしまったら淋しくなるもんじゃないのか?クラスが離れても仲良くすればよいのでは?と思いますが、クールな亜希。

新しくなったクラスで「川田さんと話してみたいなーと思ってたんだ」と玲奈に話しかけられ新しく友達ができる亜希。

ちっこい世界
だけど
あたしらの
ほとんど すべて

ちょっと ぐっときてしまうセリフである。

中学生の頃はそうだったよなぁ~。と。お金もないからね。行動範囲も狭いしね。働けないしね。

でも、働き出してその会社を辞めたとき、「狭い世界だったな」って思いました。大人になっても世界は狭くて、それが全てになってしまう事だってある。

「井の中の蛙大海を知らず されど 空の青さを知る」

・・・どっちがいいんすかね。

話戻ります。

同じクラスになった年上の杉浦好子。好子は大やけどをして2年生をやり直しているまじめな生徒。学級委員に立候補するもクラスメイトから「うっとうしい」と言われ、隣の席の男子には席を離される。

同じクラスになった近江。近江は気さくで亜希をかまってくれたり、思ったことが一緒だったり。

新しくできた友達の玲奈は感情を表に出すタイプで、イライラして「なんかおもしーことないかなー」と言い杉浦のマネをしてクラスを笑わせる。

あたしは
よっちと猪俣とすみじのことを考えていた
あんなに仲よかったのに
ちょっとしたいきちがいで
あたしが気どってるっていってきて
口をきいてくれなくなった
平気なふりをしてたけど
しぬほどさみしかった
あんなおもいをするくらいなら

そう思う亜希は一緒になって杉浦のことを笑ってしまう。しかし近江から「恥を知れ」と言われてしまう。

中学生の頃の小さな世界。それは友人関係なのかもしれない。

カーストとかヒエラルキーとかって例えられることもありますが、そうじゃなくて、仲の良い友人同士の関係。

人間なんてさ、自分が正しいとか周りが正しいとか関係なく周りに左右されるわけだから、みんなが悪口言ってたら自分も言うようになるし、ほのぼのした環境にいる子はほのぼのするんですよ。

「なんか違うな」って思っても、抜け出せないのが中学生の辛さだよなぁ。

「18の分岐点」

18歳・高校3年生になった亜希は新しい友達も増え知らないことも知れて楽しかった高校生活。亜希はは違う学校の井原とつきあっている。ひどいことを言ってもバカと言っても笑う井原は、亜希にクリスマスプレゼントを買うためにカラオケ屋でバイトをすることに。

友達と井原が働くカラオケ屋に遊びに行った亜希が出会うのは、中学2年で転校していった近江だった。

昔のことは
読みおわった本みたいに
すべて おわって
出来上がってる物語

気に入って
なつかしくても
読み返しても
結末は同じ

「見せたいものがある」と近江に呼び出され、見せられたのは杉浦好子の手紙だった。手紙の内容は、「亜希と仲良くなれたら」というもの。亜希に手づくりの眼鏡入れを作ったというイラスト。

「今度一緒に杉浦に会いに行こーな」という近江。

そして、井原からもらったプレゼントを受け取ることができなかった亜希。井原は亜希の前からいなくなる。

「21の………」

弱小出版社で働く亜希。

文章に触れていたかった
雑用でも
今の仕事はけっこう
好きだ

中学生のころは好きだった本。高校生になって読まなくなった本。

近江は飲み友達になっていて、杉浦が結婚するから会いに行こうと誘われる。その先で花を買おうと、井原の実家に行って井原にも会う亜希と近江。

あなたに
あなたに
あなたに
会いに行くから

「21の………」では、弱小出版社の担当の先生も出てきますが、可愛いんです。が、割愛。

 

【プレゼント】を読んで深読みすることは、「大切な人のことを気付いた亜希」なんじゃないかなという事です。

中学生の頃は本が好きで、逃げ場のない場所で周りに合わせて、本音の部分は言えなくて、でもそれを分かってくれている人はいて、

高校に入ったらそういった狭い世界から解放されて、楽しくて、でも、本当の自分(?)を忘れてて。久しぶりに会った近江に気づかされた。

的な。

だから、恋とか友情とかは抜きにして、「大切な人の存在」が自分の中にあって、「会いに行くから」なのかなぁ。

とか。

最後は、出版社で担当している先生に「わかりました!今すぐ行きますから 待っててください」と言うんですが、それも、もしかしたら「大切な存在」になる人なのかなぁ。

という深読みです。

それにしても、近江、いいよな。なんかイイ存在感で好きです。

気に入ってなつかしくて読み返しても結末は同じかもしれないですが、気に入ってるから手放さない本もあるわけで。

そんな存在なのかと。

小さい世界だけど、そこに大切なものはあるのかもしれない。

【プレゼント】主な登場人物

川田亜希(かわだあき)物語の主人公
近江(おうみ)亜希の中学のクラスメイト
杉浦好子(すぎうらよしこ)亜希の中学のクラスメイトだが1歳上
桜井玲奈(さくらいれな)亜希の中学のクラスメイトで仲良くしている
井原(いはら)高校生の空きが付き合っている彼

 

同時に収録されている短編、【おうじさまのゆくえ】はかわいらしい話。【あなたにききたい】はそこそこやべー話。

【プレゼント】【おうじさまのゆくえ】は、「いくえみ綾読みきり傑作選 1」にも収録されています。